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桝田・丹羽法律事務所

兼業主婦の休業損害について

2017/08/26

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パートタイマー等と主婦業を兼業している兼業主婦の方が、交通事故に遭った場合、休業損害の取扱いが問題となることが少なくありません。
 
まず、「基礎収入を幾らに設定するのか」が問題になります。
 
また、家事労働について、休業損害を主張している期間に「パートタイマー等としての収入があった場合に、どう取り扱うのか」が問題となります。
 
兼業主婦の基礎収入については、概ね、現実の収入額と賃金センサス女性全年齢平均のいずれか高い方を採用することが、実務として定着しているといわざるを得ません。
 
パートタイマー等と家事労働を一生懸命頑張って両立されている兼業主婦の方からすれば、納得し難いところかと推測しますが、現実の収入額と賃金センサス女性全年齢平均を加算して基礎収入とする考え方を採るのは主流ではないのが実情です。
 
平成11年に発表された東京地裁、大阪地裁、名古屋地裁の三庁共同提言では、有職の主婦の場合について、「実収入額が全年齢平均賃金を上回っているときは実収入額によるが、下回っているときは(1)に従って処理する。」とされており、(1)として、原則は全年齢平均賃金、例外的に年齢別平均賃金とされています。
 
赤い本においては、「パートタイマー、内職等の兼業主婦については、現実の収入額と女性平均労働者の平均賃金額のいずれか高い方を基礎として算出する。」とされています。
 
青本においては、「家事に従事しつつ、パートタイマーとしてあるいは事業による収入を得ている者も多いが、その場合でも、実収入部分を女性平均賃金額に加算せず、平均賃金額を基礎収入とする。金銭収入が平均賃金額以上のときは、実収入額によって給与所得者あるいは個人事業者等として損害額を算定する。」とされています。
 
では、事故後、家事労働については、事故による傷病の影響によりほとんどできない、ないしは、一部ができない状況にあったものの、パートタイマー等の仕事に関しては、「職場に迷惑を掛けられない」「事実上の解雇になる恐れがある」等の事情により、無理をして継続して就労をして、ほとんど減収が生じていなかったような場合は、どのように取り扱われるべきなのでしょうか。
 
大きくは2つの考え方があります。
 
1 あくまで基礎収入は、賃金センサス女性全年齢平均として、そこからパートタイマー等による現実収入額を控除して、その額を基礎収入として、家事労働の休業損害を算定する。
 
例:平成28年賃金センサス女性全年齢平均376万2300円
  パートタイマー収入200万円
  家事労働の基礎収入=376万2300円-200万円=176万2300円
 
こちらが裁判例として散見される考え方かと思われます。
 
【大阪地判昭和61年3月25日】
主婦兼会社員である兼業主婦(34歳)につき、「専業主婦の家事労働に対する評価としての女子雇用労働者の平均賃金から兼業において得ている現実の収入を差引いた金銭を兼業主婦の家事労働に対する金銭的評価と解するのが相当である。」と判示しています。
 
【横浜地判平成21年3月12日】
兼業主婦(49歳)につき、「原告は前記職場での稼働と家事労働によって前記1日当たり9678円(平成17年賃金センサス女性労働者学歴計50~54歳の平均年収額353万2200円の1日当たりの額)に相当する経済的利益を上げていたものと認められるから、9678円から稼働による1日当たりの収入額6406円を差し引いた3272円を家事労働分の基礎収入とみることとする。」と判示しています。
 
実際、青本には、「本来主婦業は24時間労働であり、その主婦労働全体の経済的価値を平均賃金をもって評価しようとするのであるから、その一部の時間を割いて現実のパート収入を得たとしても、それは主婦労働の一部が現実収入のある別の労働に転化したにすぎないとの理由付けがなされている。」とされており、この考え方に沿う説明がなされています。
 
ただ、この考え方の場合、兼業主婦の方が、無理をして、パートタイマー等の兼業を頑張った場合、頑張れば頑張るほど、休業損害が減るというおかしな事態が生じます。
 
また、あまりケースとしては多くないですが、兼業による収入が賃金センサス女性全年齢平均を超えるような兼業主婦の場合には、家事労働についてどんなに支障が生じていても休業損害が一切認められないということになってしまいます。
(この場合は、後述のとおり、慰謝料で考慮すべきとの指摘が裁判官からなされています。)
 
2 基礎収入について、パートタイマー等による現実収入額と家事労働による賃金センサス女性全年齢平均の合計額として捉えて、家事労働に関しては、あくまで、賃金センサス女性全年齢平均を基礎として、休業損害を算定する。
 
例:平成28年賃金センサス女性全年齢平均376万2300円
   パートタイマー収入200万円
   基礎収入576万2300円(パートタイマー収入200万円+家事労働の基礎収入376万2300円)
 
こちらの考え方は実務の主流ではないですが、分かりやすく、スッキリとしています。
また、兼業主婦の家事労働についても正当な評価がなされているといえます。
 
ただ、不法行為における損害の考え方の通説である差額説の例外を拡張するような考え方になっているともいえます。
 
そもそも、損害については、「不法行為がなければ被害者が置かれていたであろう財産状態」と「不法行為があったために被害者が置かれている財産状態」との差と考えられています。
そのため、家事労働については、事故により行うことができなかったとしても、収入がそもそも予定されていないため、減収になることもなく、損害が発生していないということになってしまいます。
もっとも、最高裁が、この差額説的な考え方の例外ないし修正として、家事労働について、賃金センサス女性全年齢平均にて、逸失利益を算定するという考え方を採用して、原則を修正しています。
 
この考え方を更に拡張するような考え方といえます。
 
また、兼業主婦の場合、家事労働に費やす時間自体は、専業主婦に比べて少なくならざるを得ないところ、それでも家事労働分について、専業主婦と同等の評価をなすことになるため、兼業主婦を必要以上に優遇することにならないかという疑問も生じます。
 
ただ、このような考え方を採用している裁判例も一部見受けられます。
 
【さいたま地判越谷支部平成27年11月19日】
年収にして、金206万8578円の収入のあった兼業主婦について、事故後6日目以降、30日目までの25日間について、兼業収入が存在したものの、それを考慮することなく、賃金センサス女性全年齢平均を基礎収入として、休業損害を算定しています。
 
【福岡高判平成28年1月28日】
大学教授の個人秘書として、年収にして、金284万8000円の収入のあった兼業主婦について、事故後412日間について、兼業収入が存在したものの、それを考慮することなく、賃金センサス女性全年齢平均を基礎収入として、休業損害を算定しています。
 
なお、2003年版赤い本講演録にて、鈴木順子裁判官が、以下のとおり論じられています。
 
『稼動収入年間500万円の兼業主婦が受傷し、仕事に復帰することができて減収はないものの、帰宅後の家事労働ができない場合』
 
「有職の主婦は、時間的な制約等から専業主婦と比較して家事労働が質量共に劣るのが通常であり、特別の事情がない限り、家事労働と他の労働を合わせて一人前の労働分として評価するのが相当であるとされています(塩崎勤「主婦の逸失利益」判タ927・23)。
受傷後も仕事は休まず現実の収入減少はなかったが、家事労働には相当程度の支障が出たというような場合も、家事労働の逸失利益を認めるのは難しく、慰謝料で斟酌するのが相当ですが、家政婦等を雇用し家事労働の負担が軽減したため、休業損害が発生しなかったとみられる事情があれば、支出した家政婦代が損害として認められる余地もあるでしょう。」
 
被害者の代理人弁護士としては、2の考え方で主位的に主張して、予備的に、慰謝料で勘案するような考え方を主張するのが望ましいと判断されます。
 
ただ、パートタイマー等は就業できていたにもかかわらず、家事労働はできなかったということを証明することは容易ではないでしょう。
医療記録、各種検査結果、本人の陳述書、家族の陳述書等を駆使して、家事労働に支障が出ていたという真実を明らかにしていくほかありません。
 
いずれにしても、兼業主婦の休業損害については、必ずしも明確に定まっていない部分もあります。被害者側の弁護士が裁判例を積み上げて、実務の状況を被害者側にとって適正な形に作り上げていく必要があると判断されるところです。
 
兼業主婦の方で、休業損害について納得が行かない場合、お気軽にご相談下さい。
 
弁護士 丹羽 錬
 

過失割合を判断する上で重要となる資料について

2017/08/10

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交通事故において、過失割合が問題となり、交渉が難航することは少なくありません。
 
実務において、過失割合を判断する際、別冊判例タイムズ38号「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版」という裁判官が作成された書籍がほぼ参照されます。
 
こちらの本では、事故類型別に基本となる過失割合と修正要素が定められています。
 
そのため、過失割合の判断の流れとしては、まず事故類型を判断して、その類型に当てはまる基本過失割合を別冊判例タイムズ38で確認した上で、修正要素にあたる事実を考慮し、最終的な当該事故における過失割合を判断することになります。
 
以下では、過失割合の判断、特に事故類型と修正要素を判断する上で重要となる資料について、主なものをご紹介したいと思います。
 
①ドライブレコーダーの映像
ドライブレコーダーの映像は、事故の様子をありのままに写したものですから、車両に搭載されて録画されていれば、事故類型や修正要素を判断する上で、非常に重要な資料となります。
 
②事故現場付近の防犯カメラ映像
事故現場付近の防犯カメラに事故の様子が写っている場合、これも①と同様、非常に重要な資料となります。
ただ、事故現場付近に防犯カメラがあるか否かは偶然の事情ですし、設置場所によって、映ってはいるものの見えづらく、事故態様が把握しづらいこともあります。
 
③事故直後の写真
事故直後に事故現場の写真を撮っていた場合、車の停止状況や車両の損傷部位から、ある程度事故類型や修正要素を推測できる場合があります。
ただ、交通事故に遭われてパニックになっていたり、ケガをされている場合に、写真を撮るということはなかなか難しいといえます。
 
④車の損傷状態の写真
車の損傷状態の写真から、事故類型や修正要素を推測できる場合があります。
こちらは、修理費を見積もる際に写真が撮られることが多く、相手方保険会社から資料として取り寄せられること、事故に遭われた後しばらく経ってからでも撮影できることから、入手しやすい資料といえます。
 
⑤実況見分調書
実況見分調書とは、警察官が、事故の当事者等から話を聞いた上で作成する事故の状況を再現した図面です。
第三者である警察官が、当事者の話を聞いた上で作成するものですから、資料としての信用性が高く、事故類型を把握しやすい資料です。
こちらは、人身事故として処理された場合に作成され、作成された場合には入手しやすい資料です。
ただ、実際に作成された図面が言い分と異なっているということも少なからずあります。また、一方当事者が救急搬送されるなどして、現場にいない場合、他方の当事者の言い分のみを基に作成される場合もあります。
よって、事故後、警察官から話を聞かれた際には、しっかり自分が認識した状況を伝えるということも重要です。
 
⑥事故当事者の証言
もちろんではありますが、事故に遭われた方の証言は、過失割合を判断する上でのスタートラインとして、重要な資料となります。私たち弁護士も、まずはご依頼人の話を詳細に伺うことからスタートします。
ただ、交渉の場面では、両者の言い分の違いから水掛け論となることも少なくありませんので、事故当事者の証言を裏付ける資料の収集が重要となります。
 
以上、過失割合を判断する上で重要な主な資料について、紹介させて頂きました。事故の前から備えられるものとしては①、事故の後に注意できるものとして③④⑤⑥があるといえるでしょう。
 
過失割合の判断は、専門的知識を必要とすることが多く、資料の収集も極めて重要です。
過失割合についてお困りの方は、専門的知識を有し、資料の収集方法にも精通した弁護士にご相談されることをお勧めします。
 
弁護士 水梨雄太

心因的要因による素因減額

2017/07/31

panhureto.JPG交通事故により頸部、腰部等の挫傷にとどまる傷害を負った被害者について、抑うつ状態、不安の状態、意欲低下の状態、慢性化した幻覚・妄想性の状態、記憶又は知的能力の障害等が発生する場合であって、且つ、現在の医学ではそれらの症状の原因となる脳損傷等の器質的損傷が確認できない場合があります。
 
このような事案では、治療期間が長期化することがあり、また、前述した各精神症状の発生原因が客観的に明確ではないことなどから、加害者側との間で紛争が生じることがあります。
 
例えば、加害者側からは、治療期間の長期化の原因は、被害者の心因的要因が影響しているからであり、被害者に発生したとされる損害額全額を加害者に負担させるのは公平ではないといった主張がなされることがあります。
 
ここにいう心因的要因とは、一般的な民事訴訟実務においては、心因性反応を引き起こす神経症一般のほか、賠償神経症(賠償に対する願望や賠償が受けられないことの不満を原因とする心因反応)や、症状の訴えに誇張があるような場合も含むと解されております。
 
このような考え方を前提にして、民事訴訟においては、事故が軽微で通常人に対し心理的影響を与える程度のものではなく、自覚症状に見合う他覚的な医学的所見を伴わず、一般的な加療相当期間を超えて加療を必要とした場合等には、賠償すべき金額を決定するに当たり、心因的要因を斟酌することができる、という取り扱いがなされております。
 
例えば、頸部、腰部挫傷にとどまる傷害を負った被害者が、事故後に不眠症や失声症などを併発し、その後自殺してしまったという事案で、心因的要因を原因に、損害額の70%が減額されている裁判例(平成25年10月24日名古屋地裁判決)があります。
 
これは、頸部、腰部挫傷にとどまる傷害を負った被害者がその後うつ病を発症し自殺してしまったという事案についての判決であり、大幅な減額がなされております。
その他、非器質性精神障害に起因して両下肢の用を廃したという事案において、70%の減額がなされた裁判例もあります(平成26年2月4日大阪地裁判決)。
 
他方で、従前の裁判例上、事故後に発生した後遺障害の程度がそれほど重くない場合(後遺障害等級12級以下の場合)には、心因的要因による減額がなされないこともあり、減額がなされたとしても上記裁判例のような大きな減額幅にはならないことが多いという傾向が認められます。
 
非器質性精神障害が問題となるような場合には、医師や弁護士等の専門家のサポートが必要なことが多いと思われますので、ご相談されることをお勧めいたします。
 
弁護士 桝田 泰司

プロフィール

当事務所は、交通事故の被害者側に特化した法律事務所です。交通事故事件に関する十分な専門性・知識・経験を有する弁護士が事件を担当致します。
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