交通事故の被害者側に特化した札幌の法律事務所

桝田・丹羽法律事務所

  • 休業損害

個人事業主において、売上額や所得額に変動がない場合の休業損害について

2017/12/23

CIMG2260.JPGのサムネール画像のサムネール画像休業損害とは、被害者が事故による負傷の治療又は療養のために休業又は不十分な就業を余儀なくされ、それによって治療期間中に得られたはずの収入が得られなかったという、過去に得られたはずの利益を意味すると考えられています。
 
個人事業主の方が交通事故に遭われた事案において、治療期間の売上額や所得額が事故前とほとんど変わっていないという場合が見受けられます。
このような場合、加害者の保険会社は、収入が減っていないのであれば休業損害は発生していないなどと主張して、休業損害の賠償に応じてくれないことが多いように思われます。
 
しかしながら、以下のような場合には、休業損害の発生が認められて然るべきです。
①交通事故が発生していなければ事故前よりは多い売上額や所得額を得られたであろうといえる場合
②休業期間における売上額や所得額が事故前と変わっていなくとも、それが被害者の特段の努力によるといえる場合
③近い将来売上額や所得額が減少することが高度の蓋然性をもって予測できる場合
 
裁判官作成の文献よれば、個人事業主の休業損害について、裁判所は、例えば前年同期の売上額との比較、売上や仕入の相手方の変化や金額の変遷、事業主の勤務形態と業務遂行上の位置づけ等の視点から、事業主の提出する帳簿類とそれを説明する陳述書等を基礎資料とし、できる限り休業損害の実態を把握することに努めるという趣旨の記載があり、このような考え方は参考になります。
 
当職としては、できる限り正確に休業損害の実態を把握し、適正な賠償が実現されるよう、尽力していきたいと考えております。
個人事業主の方で休業損害についてご懸念がある場合は、お気軽にご相談下さい。
 
弁護士 桝田泰司

兼業主婦の休業損害について

2017/08/26

benngoshi niwa.JPGのサムネール画像
パートタイマー等と主婦業を兼業している兼業主婦の方が、交通事故に遭った場合、休業損害の取扱いが問題となることが少なくありません。
 
まず、「基礎収入を幾らに設定するのか」が問題になります。
 
また、家事労働について、休業損害を主張している期間に「パートタイマー等としての収入があった場合に、どう取り扱うのか」が問題となります。
 
兼業主婦の基礎収入については、概ね、現実の収入額と賃金センサス女性全年齢平均のいずれか高い方を採用することが、実務として定着しているといわざるを得ません。
 
パートタイマー等と家事労働を一生懸命頑張って両立されている兼業主婦の方からすれば、納得し難いところかと推測しますが、現実の収入額と賃金センサス女性全年齢平均を加算して基礎収入とする考え方を採るのは主流ではないのが実情です。
 
平成11年に発表された東京地裁、大阪地裁、名古屋地裁の三庁共同提言では、有職の主婦の場合について、「実収入額が全年齢平均賃金を上回っているときは実収入額によるが、下回っているときは(1)に従って処理する。」とされており、(1)として、原則は全年齢平均賃金、例外的に年齢別平均賃金とされています。
 
赤い本においては、「パートタイマー、内職等の兼業主婦については、現実の収入額と女性平均労働者の平均賃金額のいずれか高い方を基礎として算出する。」とされています。
 
青本においては、「家事に従事しつつ、パートタイマーとしてあるいは事業による収入を得ている者も多いが、その場合でも、実収入部分を女性平均賃金額に加算せず、平均賃金額を基礎収入とする。金銭収入が平均賃金額以上のときは、実収入額によって給与所得者あるいは個人事業者等として損害額を算定する。」とされています。
 
では、事故後、家事労働については、事故による傷病の影響によりほとんどできない、ないしは、一部ができない状況にあったものの、パートタイマー等の仕事に関しては、「職場に迷惑を掛けられない」「事実上の解雇になる恐れがある」等の事情により、無理をして継続して就労をして、ほとんど減収が生じていなかったような場合は、どのように取り扱われるべきなのでしょうか。
 
大きくは2つの考え方があります。
 
1 あくまで基礎収入は、賃金センサス女性全年齢平均として、そこからパートタイマー等による現実収入額を控除して、その額を基礎収入として、家事労働の休業損害を算定する。
 
例:平成28年賃金センサス女性全年齢平均376万2300円
  パートタイマー収入200万円
  家事労働の基礎収入=376万2300円-200万円=176万2300円
 
こちらが裁判例として散見される考え方かと思われます。
 
【大阪地判昭和61年3月25日】
主婦兼会社員である兼業主婦(34歳)につき、「専業主婦の家事労働に対する評価としての女子雇用労働者の平均賃金から兼業において得ている現実の収入を差引いた金銭を兼業主婦の家事労働に対する金銭的評価と解するのが相当である。」と判示しています。
 
【横浜地判平成21年3月12日】
兼業主婦(49歳)につき、「原告は前記職場での稼働と家事労働によって前記1日当たり9678円(平成17年賃金センサス女性労働者学歴計50~54歳の平均年収額353万2200円の1日当たりの額)に相当する経済的利益を上げていたものと認められるから、9678円から稼働による1日当たりの収入額6406円を差し引いた3272円を家事労働分の基礎収入とみることとする。」と判示しています。
 
実際、青本には、「本来主婦業は24時間労働であり、その主婦労働全体の経済的価値を平均賃金をもって評価しようとするのであるから、その一部の時間を割いて現実のパート収入を得たとしても、それは主婦労働の一部が現実収入のある別の労働に転化したにすぎないとの理由付けがなされている。」とされており、この考え方に沿う説明がなされています。
 
ただ、この考え方の場合、兼業主婦の方が、無理をして、パートタイマー等の兼業を頑張った場合、頑張れば頑張るほど、休業損害が減るというおかしな事態が生じます。
 
また、あまりケースとしては多くないですが、兼業による収入が賃金センサス女性全年齢平均を超えるような兼業主婦の場合には、家事労働についてどんなに支障が生じていても休業損害が一切認められないということになってしまいます。
(この場合は、後述のとおり、慰謝料で考慮すべきとの指摘が裁判官からなされています。)
 
2 基礎収入について、パートタイマー等による現実収入額と家事労働による賃金センサス女性全年齢平均の合計額として捉えて、家事労働に関しては、あくまで、賃金センサス女性全年齢平均を基礎として、休業損害を算定する。
 
例:平成28年賃金センサス女性全年齢平均376万2300円
   パートタイマー収入200万円
   基礎収入576万2300円(パートタイマー収入200万円+家事労働の基礎収入376万2300円)
 
こちらの考え方は実務の主流ではないですが、分かりやすく、スッキリとしています。
また、兼業主婦の家事労働についても正当な評価がなされているといえます。
 
ただ、不法行為における損害の考え方の通説である差額説の例外を拡張するような考え方になっているともいえます。
 
そもそも、損害については、「不法行為がなければ被害者が置かれていたであろう財産状態」と「不法行為があったために被害者が置かれている財産状態」との差と考えられています。
そのため、家事労働については、事故により行うことができなかったとしても、収入がそもそも予定されていないため、減収になることもなく、損害が発生していないということになってしまいます。
もっとも、最高裁が、この差額説的な考え方の例外ないし修正として、家事労働について、賃金センサス女性全年齢平均にて、逸失利益を算定するという考え方を採用して、原則を修正しています。
 
この考え方を更に拡張するような考え方といえます。
 
また、兼業主婦の場合、家事労働に費やす時間自体は、専業主婦に比べて少なくならざるを得ないところ、それでも家事労働分について、専業主婦と同等の評価をなすことになるため、兼業主婦を必要以上に優遇することにならないかという疑問も生じます。
 
ただ、このような考え方を採用している裁判例も一部見受けられます。
 
【さいたま地判越谷支部平成27年11月19日】
年収にして、金206万8578円の収入のあった兼業主婦について、事故後6日目以降、30日目までの25日間について、兼業収入が存在したものの、それを考慮することなく、賃金センサス女性全年齢平均を基礎収入として、休業損害を算定しています。
 
【福岡高判平成28年1月28日】
大学教授の個人秘書として、年収にして、金284万8000円の収入のあった兼業主婦について、事故後412日間について、兼業収入が存在したものの、それを考慮することなく、賃金センサス女性全年齢平均を基礎収入として、休業損害を算定しています。
 
なお、2003年版赤い本講演録にて、鈴木順子裁判官が、以下のとおり論じられています。
 
『稼動収入年間500万円の兼業主婦が受傷し、仕事に復帰することができて減収はないものの、帰宅後の家事労働ができない場合』
 
「有職の主婦は、時間的な制約等から専業主婦と比較して家事労働が質量共に劣るのが通常であり、特別の事情がない限り、家事労働と他の労働を合わせて一人前の労働分として評価するのが相当であるとされています(塩崎勤「主婦の逸失利益」判タ927・23)。
受傷後も仕事は休まず現実の収入減少はなかったが、家事労働には相当程度の支障が出たというような場合も、家事労働の逸失利益を認めるのは難しく、慰謝料で斟酌するのが相当ですが、家政婦等を雇用し家事労働の負担が軽減したため、休業損害が発生しなかったとみられる事情があれば、支出した家政婦代が損害として認められる余地もあるでしょう。」
 
被害者の代理人弁護士としては、2の考え方で主位的に主張して、予備的に、慰謝料で勘案するような考え方を主張するのが望ましいと判断されます。
 
ただ、パートタイマー等は就業できていたにもかかわらず、家事労働はできなかったということを証明することは容易ではないでしょう。
医療記録、各種検査結果、本人の陳述書、家族の陳述書等を駆使して、家事労働に支障が出ていたという真実を明らかにしていくほかありません。
 
いずれにしても、兼業主婦の休業損害については、必ずしも明確に定まっていない部分もあります。被害者側の弁護士が裁判例を積み上げて、実務の状況を被害者側にとって適正な形に作り上げていく必要があると判断されるところです。
 
兼業主婦の方で、休業損害について納得が行かない場合、お気軽にご相談下さい。
 
弁護士 丹羽 錬
 

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当事務所は、交通事故の被害者側に特化した法律事務所です。交通事故事件に関する十分な専門性・知識・経験を有する弁護士が事件を担当致します。
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