交通事故の被害者側に特化した札幌の法律事務所

桝田・丹羽法律事務所

オートローンを組んで車両を購入した場合の車両修理費の請求について

2017/06/25

最近、オートローンを組んで代金を分割支払いしている車両購入者から、車両修理費用等の損害賠償請求に関する相談を受けました。
 
オートローンを組んでいる場合、車両の所有権が信販会社等に留保されている(所有権留保特約付売買)ことが多く、車両購入者は所有者ではないと考えられることから、所有者ではない使用者が車両修理費用相当額の損害賠償請求をすることができるのかが問題となります。
 
使用者が、損傷した車両の修理をして、修理費用を自ら支払った後、修理費相当額の損害賠償請求をする場合、そのような請求は認められると考えられますので(民法422条の類推適用)、問題になるのは、使用者が修理をせず、修理費を支払わずに請求する場合です。
 
この点、従前の複数の裁判例において、所有権留保特約付売買の買主が、損傷した車両を修理して修理費相当額を負担する予定があるような場合には、当該買主の修理費用相当額の損害賠償請求が認められています(東京地裁平成26年11月25日判決など)。
 
従前の裁判例の中には、損傷の程度が高度であり修理不能な場合(物理的全損の場合)には、所有権留保特約付売買の売主に損害賠償請求権が帰属し、買主が残代金を支払った後、買主が損害賠償請求権を取得するという考え方を示すものがあり(東京地裁平成2年3月13日判決)、この点には注意が必要かと思われます。
 
オートローンを組んで代金を分割支払いされている車両購入者は少なくなく、交通事故による損害賠償請求の際に問題となることがあります。
このような場合には、所有権留保特約の有無、損傷の程度、今後の修理の予定などを確認する必要があると考えられます(なお、単純に車両を有償または無償で借りて運転していた際に交通事故に遭って当該車両が損傷してしまったような場合、前述した所有権留保特約付売買に関する考え方は当然には妥当しません。)。
 
以上、簡単ですが、最近検討した点をご報告いたします。
 
弁護士 桝田泰司

所内検討会

2017/06/16

当事務所では、交通事故事案について、毎月、所内検討会を行っています。
成功事例、新奇事例、困難事例等について、各自、発表して、情報を共有化することで事務所全体の力を高めています。
 
6月の所内検討会では、以下の事例が取り上げられました。
 
・自賠責非該当にもかかわらず、訴訟において、14級前提の和解が成立した事案
・自賠責非該当にもかかわらず、訴訟において、12級前提の和解が成立した事案
・TFCC損傷の事案
 ①自賠責非該当で、10級前提で訴訟提起している事案
 ②自賠責で、10級が認定された事案
 ③自賠責で、12級が認定された事案
 ④自賠責非該当で、これから異議申立を行う事案
・海外旅行中に交通事故被害に遭った事案
・主治医に後遺障害診断書の全面的な書き直しを依頼した事案
・保険会社の対応が明らかに不当な事案
 
TFCC損傷が問題となっている事案は、事務所内で、現時点だけで4件取り扱っており、後遺障害診断書の記載内容や自賠責の判断内容を比較することができました。
 
当事務所は交通事故に特化していますので、同じ傷病名での後遺障害の申請の仕方等を比較して検討することが出来ます。
TFCC損傷のような必ずしも一般的ではない傷病でも、一時に数件取り扱っている状況です。
一般的な頚椎捻挫、腰椎捻挫の後遺障害は常に数十件取り扱っている状況です。
 
定期的に所内検討会を開催して、情報を共有化して、ノウハウを蓄積することで、交通事故被害者のお力に少しでもなれるよう尽力しております。
 
弁護士 丹羽 錬

死亡事故における内縁の配偶者の慰謝料について

2017/05/30

民法711条は、「他人の生命を侵害したものは、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない。」と規定しています。
この条文からすると、被害者が死亡した場合に慰謝料が請求できるものは、被害者の父母、配偶者、子に限られるとも考えられます。
 
この点に関して、昭和49年12月17日最判は、「被害者との間に民法711条所定の者と実質的に同視しうべき身分関係が存し、被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた者は、同条の類推適用により、加害者に対し直接に固有の慰謝料を請求しうる」と判示しました。
この事案では、実際に、約20年に渡って、被害者と同居し、被害者の庇護のもとに生活を維持していた身体障害を有する被害者の夫の妹に慰謝料請求が認められました。
 
同最判によれば、以下の2要件を満たす場合には、父母、配偶者、子以外の者にも固有の慰謝料請求権が認められるということになります。
①民法711条所定の者と実質的に同視しうべき身分関係があること
②甚大な精神的苦痛を受けたこと
 
内縁の配偶者においては、①②いずれも満たすと考えられますので、裁判例においても固有の慰謝料が認められています。
 
裁判例で内縁関係が認められるか否かは、概ね以下の要素で判断されています。
・同居していること及びその期間
・同一家計であること
・親族や勤務先等対外的社会的に夫婦として扱われていたか
 
内縁の配偶者と認められた場合の慰謝料の金額についてですが、一般的には、父母や子に認められる固有の慰謝料の金額より高額である場合がほとんどです。
理由としては、実質的には配偶者と同視できるものの、被害者本人の損害賠償請求権を相続により取得できないことから、特に保護する必要性が高いということにあります。
 
具体的には、以下のとおり、慰謝料総額に占める割合が3分の1から5分の1程度と認定されています。
裁判例によっては、2分の1を越える金額が認定されています。

 
   慰謝料額(括弧内は総額)
 大阪地判27.10.14  金600万円 (金2400万円)
 大阪地判27.4.10  金100万円 (金2800万円)
 岡山地判27.3.3  金300万円 (金2800万円)
 大阪地判21.12.11  金1300万円 (金2300万円)
 大阪地判21.9.30  金800万円 (金2400万円)
 東京地判12.9.13  金500万円 (金2400万円)
 大阪地判9.3.25  金1000万円 (金2500万円)

内縁の配偶者の慰謝料については、赤本や青本に金額の目安が記載されているわけでもなく、慰謝料総額に占める割合が法定されているわけでもありません。
裁判官による判断のブレが大きいといえますので、主張、立証を的確に行う必要があるといえます。

裁判官によっては、1000万円を越える慰謝料を認定をしているケースもありますので、内縁配偶者の方は、諦めることなく専門家に相談すべきといえます。
 
弁護士 丹羽 錬
 

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当事務所は、交通事故の被害者側に特化した法律事務所です。交通事故事件に関する十分な専門性・知識・経験を有する弁護士が事件を担当致します。
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