交通事故の被害者側に特化した札幌の法律事務所

桝田・丹羽法律事務所

実通院日数が少ない場合の傷害慰謝料について

2017/10/30

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交通事故被害者の方から、「保険会社から提示された慰謝料の金額が適正であるのかどうか、分からない」とのご相談を受けることが良くあります。
 
慰謝料に関しては、傷害部分の慰謝料と後遺障害部分の慰謝料に分けて算定されるのが通常ですが、今回は傷害部分の慰謝料について、ご説明致します。
 
交通事故に遭われてケガをして、治療のために入院したり、医療機関に通われた場合、傷害慰謝料(「入通院慰謝料」ともいいます。)が交通事故に基づく損害として支払われます。
 
傷害慰謝料は、基本的には、入院した期間と通院した期間の長短に応じて金額が算定されています。入通院した期間が長くなると、支払われる傷害慰謝料の金額も大きくなるのが通常です。
 
実務においては、入通院期間を基にした傷害慰謝料の額の算定について、公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部が発行する「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(通称「赤い本」)が参照されます。
これを参照して、基本的には入通院した期間を基に、傷害慰謝料の額を算定します。
 
<入通院した期間とは?>
・事故後、治療のために入院し、退院後、通院した場合
→基本的には、「入院期間」は実際に入院した期間、「通院期間」は「事故に遭った日」から「治療が終了した日」までの期間から「入院期間」を差し引いた期間になります。
 
・事故後、治療のために通院のみした場合
→基本的には、「通院期間」は「事故に遭った日」から「治療が終了した日」までの期間になります。
 
 
被害者の方の中には、通院期間は長い期間になっているけれども、実際に病院や整骨院等に通った日数(「実通院日数」といいます。)が少ないという方がいらっしゃいます。
 
例えば、交通事故で骨折したものの、医師から「骨が自然にくっつくのを待ちましょう。」と言われたため、治療終了までには6ヶ月(通院期間は180日)かかったが、実際に病院に行った回数は、経過観察のための月1回の通院(実通院日数6日)のみだったという場合が考えられます。
 
通院期間6ヶ月に対応する傷害慰謝料の額は、骨折の場合、赤い本によると大体116万円が目安となります(骨折の場合と異なり、むち打ち症で他覚所見がない場合は、通院期間6ヶ月の場合、89万円が目安となります。後述の(※)参照)。
 
しかしながら、赤い本には、以下のような記載があります。
 
「通院が長期にわたる場合は、症状、治療内容、通院頻度をふまえ実通院日数の3.5倍程度を慰謝料算定のための通院期間の目安とすることもある。」
 
この記載をもとに、保険会社が、実通院日数が少ない場合に、実通院日数の3.5倍を通院期間として傷害慰謝料を算定することがあります。
つまり、上記の事例で言えば、実通院日数(6日)の3.5倍である21日を通院期間として傷害慰謝料を算定してくるということです(通院期間が21日の場合の傷害慰謝料の額の目安は、19万円程度となり、額が大幅に下がります。)。
 
しかし、傷害慰謝料は、交通事故によって傷害を負ったことにより被ったあらゆる精神的苦痛を慰謝するものです。
単純に実通院日数が少ないことのみをもって、通院期間について実通院日数の3.5倍を用いるのは、妥当ではありません。
骨折の方であれば、通院せずに自宅で安静にしていたとしても、痛みや生活上の不便を被り続けているわけであり、それらによる精神的ダメージを考慮しなければ、適正な慰謝料とはいえません。
 
そして、赤い本の記載において「目安とすること『も』ある」とされているとおり、実通院日数の3.5倍程度を目安とするのは例外的な場合に限られているといえます。
また、「症状、治療内容、通院頻度をふまえ」とあるとおり、症状や治療内容なども考慮すべきことを示唆しています。
 
したがって、実通院日数が少ない場合でも、通院期間として実通院日数の3.5倍を目安として算出された傷害慰謝料の額が適正ではないことが少なくありません。
 
実通院日数が少ないことを理由に保険会社から低額の慰謝料を提示されてお困りの方、実通院日数が少ないために低額の慰謝料の提示をされるのではないかとご不安な方は、お気軽にご相談下さい。
 
※通院期間が6ヶ月で傷害慰謝料として116万円が目安とされるのは、むち打ち症で他覚所見がない場合や軽い打撲・挫創の場合以外で、1週間に2~3回程度、病院ないし整骨院等に通った場合と言われています。
 
弁護士 水梨雄太

同一部位に関して、過去の交通事故の際、既に後遺障害の認定を受けている場合について

2017/09/24

CIMG2260.JPG交通事故により、通院を継続しても、最後に後遺症が残ってしまうことがあります。
最近、以下のようなご相談を受けました。
10年以上前の交通事故(1回目)によって後遺症が残存してしまい自賠責保険会社による後遺障害等級認定を受けていたところ、今回の交通事故(2回目)により同じ部位を痛めてしまい症状が根強く残存しているというご相談です。
このような場合、再度、同一部位に関して、自賠責保険における後遺障害としての認定を受けることができるのでしょうか。
 
この点、自賠法施行令によれば、同一部位に新たな障害が加わったとしても、その結果、既存の障害が該当する等級よりも現存する障害の該当する等級が重くならなければ、自賠責保険における後遺障害として評価することはできないとされています。
 
自賠責保険の後遺障害は永続性を前提としていますので、原則的には、このような考え方でやむを得ないところです。
 
ただし、1回目の交通事故による残存した症状の程度が比較的軽度であり、1回目の交通事故と2回目の交通事故との間の間隔がかなり空いているような場合には、注意が必要です。
 
例えば、「ある人が10年前の交通事故により頸部の神経症状(後遺障害等級14級)の後遺障害を残したが、今回の交通事故により頸部打撲等の傷害を負い頸部の神経症状(後遺障害等級14級)の後遺障害を残した」というような場合を考えてみます。
 
この場合、既存の後遺障害が該当する等級と現存する後遺障害の該当する等級とが同じですので、自賠責保険における後遺障害として評価されないと考えられます。
 
しかし、頸部の神経症状(後遺障害等級14級)の場合、賠償実務上、症状固定日から5年から10年程度で就労への影響がほとんどなくなることが多いと考えられていて、賠償金算定時の逸失利益についても、通常は、3~5年程度しか認められていません。
そのため、1回目の交通事故発生から5年以上が経過しており、実際に、2回目の交通事故発生時点で、1回目の交通事故による後遺症による影響がほとんどないような状態であった場合には、訴訟を経ることで再度、後遺障害等級14級の認定を受けられる可能性があります(自賠責保険は認めません。)。
 
ご相談者のケースでは、自賠責保険では後遺障害等級の認定は受けられませんでしたが、民事訴訟を提起して主張・立証を尽くすことにより、後遺障害等級の認定を前提にした裁判上の和解(和解金約700万円)が成立しました。
 
複数回、交通事故に遭われている被害者の場合には、注意すべき事項が多いですので、弁護士に相談されることをお勧めいたします。
 
弁護士 桝田 泰司

兼業主婦の休業損害について

2017/08/26

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パートタイマー等と主婦業を兼業している兼業主婦の方が、交通事故に遭った場合、休業損害の取扱いが問題となることが少なくありません。
 
まず、「基礎収入を幾らに設定するのか」が問題になります。
 
また、家事労働について、休業損害を主張している期間に「パートタイマー等としての収入があった場合に、どう取り扱うのか」が問題となります。
 
兼業主婦の基礎収入については、概ね、現実の収入額と賃金センサス女性全年齢平均のいずれか高い方を採用することが、実務として定着しているといわざるを得ません。
 
パートタイマー等と家事労働を一生懸命頑張って両立されている兼業主婦の方からすれば、納得し難いところかと推測しますが、現実の収入額と賃金センサス女性全年齢平均を加算して基礎収入とする考え方を採るのは主流ではないのが実情です。
 
平成11年に発表された東京地裁、大阪地裁、名古屋地裁の三庁共同提言では、有職の主婦の場合について、「実収入額が全年齢平均賃金を上回っているときは実収入額によるが、下回っているときは(1)に従って処理する。」とされており、(1)として、原則は全年齢平均賃金、例外的に年齢別平均賃金とされています。
 
赤い本においては、「パートタイマー、内職等の兼業主婦については、現実の収入額と女性平均労働者の平均賃金額のいずれか高い方を基礎として算出する。」とされています。
 
青本においては、「家事に従事しつつ、パートタイマーとしてあるいは事業による収入を得ている者も多いが、その場合でも、実収入部分を女性平均賃金額に加算せず、平均賃金額を基礎収入とする。金銭収入が平均賃金額以上のときは、実収入額によって給与所得者あるいは個人事業者等として損害額を算定する。」とされています。
 
では、事故後、家事労働については、事故による傷病の影響によりほとんどできない、ないしは、一部ができない状況にあったものの、パートタイマー等の仕事に関しては、「職場に迷惑を掛けられない」「事実上の解雇になる恐れがある」等の事情により、無理をして継続して就労をして、ほとんど減収が生じていなかったような場合は、どのように取り扱われるべきなのでしょうか。
 
大きくは2つの考え方があります。
 
1 あくまで基礎収入は、賃金センサス女性全年齢平均として、そこからパートタイマー等による現実収入額を控除して、その額を基礎収入として、家事労働の休業損害を算定する。
 
例:平成28年賃金センサス女性全年齢平均376万2300円
  パートタイマー収入200万円
  家事労働の基礎収入=376万2300円-200万円=176万2300円
 
こちらが裁判例として散見される考え方かと思われます。
 
【大阪地判昭和61年3月25日】
主婦兼会社員である兼業主婦(34歳)につき、「専業主婦の家事労働に対する評価としての女子雇用労働者の平均賃金から兼業において得ている現実の収入を差引いた金銭を兼業主婦の家事労働に対する金銭的評価と解するのが相当である。」と判示しています。
 
【横浜地判平成21年3月12日】
兼業主婦(49歳)につき、「原告は前記職場での稼働と家事労働によって前記1日当たり9678円(平成17年賃金センサス女性労働者学歴計50~54歳の平均年収額353万2200円の1日当たりの額)に相当する経済的利益を上げていたものと認められるから、9678円から稼働による1日当たりの収入額6406円を差し引いた3272円を家事労働分の基礎収入とみることとする。」と判示しています。
 
実際、青本には、「本来主婦業は24時間労働であり、その主婦労働全体の経済的価値を平均賃金をもって評価しようとするのであるから、その一部の時間を割いて現実のパート収入を得たとしても、それは主婦労働の一部が現実収入のある別の労働に転化したにすぎないとの理由付けがなされている。」とされており、この考え方に沿う説明がなされています。
 
ただ、この考え方の場合、兼業主婦の方が、無理をして、パートタイマー等の兼業を頑張った場合、頑張れば頑張るほど、休業損害が減るというおかしな事態が生じます。
 
また、あまりケースとしては多くないですが、兼業による収入が賃金センサス女性全年齢平均を超えるような兼業主婦の場合には、家事労働についてどんなに支障が生じていても休業損害が一切認められないということになってしまいます。
(この場合は、後述のとおり、慰謝料で考慮すべきとの指摘が裁判官からなされています。)
 
2 基礎収入について、パートタイマー等による現実収入額と家事労働による賃金センサス女性全年齢平均の合計額として捉えて、家事労働に関しては、あくまで、賃金センサス女性全年齢平均を基礎として、休業損害を算定する。
 
例:平成28年賃金センサス女性全年齢平均376万2300円
   パートタイマー収入200万円
   基礎収入576万2300円(パートタイマー収入200万円+家事労働の基礎収入376万2300円)
 
こちらの考え方は実務の主流ではないですが、分かりやすく、スッキリとしています。
また、兼業主婦の家事労働についても正当な評価がなされているといえます。
 
ただ、不法行為における損害の考え方の通説である差額説の例外を拡張するような考え方になっているともいえます。
 
そもそも、損害については、「不法行為がなければ被害者が置かれていたであろう財産状態」と「不法行為があったために被害者が置かれている財産状態」との差と考えられています。
そのため、家事労働については、事故により行うことができなかったとしても、収入がそもそも予定されていないため、減収になることもなく、損害が発生していないということになってしまいます。
もっとも、最高裁が、この差額説的な考え方の例外ないし修正として、家事労働について、賃金センサス女性全年齢平均にて、逸失利益を算定するという考え方を採用して、原則を修正しています。
 
この考え方を更に拡張するような考え方といえます。
 
また、兼業主婦の場合、家事労働に費やす時間自体は、専業主婦に比べて少なくならざるを得ないところ、それでも家事労働分について、専業主婦と同等の評価をなすことになるため、兼業主婦を必要以上に優遇することにならないかという疑問も生じます。
 
ただ、このような考え方を採用している裁判例も一部見受けられます。
 
【さいたま地判越谷支部平成27年11月19日】
年収にして、金206万8578円の収入のあった兼業主婦について、事故後6日目以降、30日目までの25日間について、兼業収入が存在したものの、それを考慮することなく、賃金センサス女性全年齢平均を基礎収入として、休業損害を算定しています。
 
【福岡高判平成28年1月28日】
大学教授の個人秘書として、年収にして、金284万8000円の収入のあった兼業主婦について、事故後412日間について、兼業収入が存在したものの、それを考慮することなく、賃金センサス女性全年齢平均を基礎収入として、休業損害を算定しています。
 
なお、2003年版赤い本講演録にて、鈴木順子裁判官が、以下のとおり論じられています。
 
『稼動収入年間500万円の兼業主婦が受傷し、仕事に復帰することができて減収はないものの、帰宅後の家事労働ができない場合』
 
「有職の主婦は、時間的な制約等から専業主婦と比較して家事労働が質量共に劣るのが通常であり、特別の事情がない限り、家事労働と他の労働を合わせて一人前の労働分として評価するのが相当であるとされています(塩崎勤「主婦の逸失利益」判タ927・23)。
受傷後も仕事は休まず現実の収入減少はなかったが、家事労働には相当程度の支障が出たというような場合も、家事労働の逸失利益を認めるのは難しく、慰謝料で斟酌するのが相当ですが、家政婦等を雇用し家事労働の負担が軽減したため、休業損害が発生しなかったとみられる事情があれば、支出した家政婦代が損害として認められる余地もあるでしょう。」
 
被害者の代理人弁護士としては、2の考え方で主位的に主張して、予備的に、慰謝料で勘案するような考え方を主張するのが望ましいと判断されます。
 
ただ、パートタイマー等は就業できていたにもかかわらず、家事労働はできなかったということを証明することは容易ではないでしょう。
医療記録、各種検査結果、本人の陳述書、家族の陳述書等を駆使して、家事労働に支障が出ていたという真実を明らかにしていくほかありません。
 
いずれにしても、兼業主婦の休業損害については、必ずしも明確に定まっていない部分もあります。被害者側の弁護士が裁判例を積み上げて、実務の状況を被害者側にとって適正な形に作り上げていく必要があると判断されるところです。
 
兼業主婦の方で、休業損害について納得が行かない場合、お気軽にご相談下さい。
 
弁護士 丹羽 錬
 

プロフィール

当事務所は、交通事故の被害者側に特化した法律事務所です。交通事故事件に関する十分な専門性・知識・経験を有する弁護士が事件を担当致します。
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