交通事故の被害者側に特化した札幌の法律事務所

桝田・丹羽法律事務所

  • 2017年7月

心因的要因による素因減額

2017/07/31

panhureto.JPG交通事故により頸部、腰部等の挫傷にとどまる傷害を負った被害者について、抑うつ状態、不安の状態、意欲低下の状態、慢性化した幻覚・妄想性の状態、記憶又は知的能力の障害等が発生する場合であって、且つ、現在の医学ではそれらの症状の原因となる脳損傷等の器質的損傷が確認できない場合があります。
 
このような事案では、治療期間が長期化することがあり、また、前述した各精神症状の発生原因が客観的に明確ではないことなどから、加害者側との間で紛争が生じることがあります。
 
例えば、加害者側からは、治療期間の長期化の原因は、被害者の心因的要因が影響しているからであり、被害者に発生したとされる損害額全額を加害者に負担させるのは公平ではないといった主張がなされることがあります。
 
ここにいう心因的要因とは、一般的な民事訴訟実務においては、心因性反応を引き起こす神経症一般のほか、賠償神経症(賠償に対する願望や賠償が受けられないことの不満を原因とする心因反応)や、症状の訴えに誇張があるような場合も含むと解されております。
 
このような考え方を前提にして、民事訴訟においては、事故が軽微で通常人に対し心理的影響を与える程度のものではなく、自覚症状に見合う他覚的な医学的所見を伴わず、一般的な加療相当期間を超えて加療を必要とした場合等には、賠償すべき金額を決定するに当たり、心因的要因を斟酌することができる、という取り扱いがなされております。
 
例えば、頸部、腰部挫傷にとどまる傷害を負った被害者が、事故後に不眠症や失声症などを併発し、その後自殺してしまったという事案で、心因的要因を原因に、損害額の70%が減額されている裁判例(平成25年10月24日名古屋地裁判決)があります。
 
これは、頸部、腰部挫傷にとどまる傷害を負った被害者がその後うつ病を発症し自殺してしまったという事案についての判決であり、大幅な減額がなされております。
その他、非器質性精神障害に起因して両下肢の用を廃したという事案において、70%の減額がなされた裁判例もあります(平成26年2月4日大阪地裁判決)。
 
他方で、従前の裁判例上、事故後に発生した後遺障害の程度がそれほど重くない場合(後遺障害等級12級以下の場合)には、心因的要因による減額がなされないこともあり、減額がなされたとしても上記裁判例のような大きな減額幅にはならないことが多いという傾向が認められます。
 
非器質性精神障害が問題となるような場合には、医師や弁護士等の専門家のサポートが必要なことが多いと思われますので、ご相談されることをお勧めいたします。
 
弁護士 桝田 泰司

駐車場内での事故における過失割合について

2017/07/14

benngoshi niwa.JPG
交通事故というと一般的には、公道上での事故を想像しがちです。
しかし、実際には、交通事故全体の約3分の1程度は、駐車場内で発生しています。
 
法律相談にいらっしゃる被害者の方の話を聞いていても、駐車場内での事故というのが一定の割合で散見されるところです。
 
現在、自動車事故の過失割合については、東京地裁の交通事故専門部の裁判官が作成された別冊判例タイムズ38の基準が重用されています。
任意協議では、ほぼ、別冊判例タイムズ38の過失割合がベースとなって話し合いが行われます。
そして、多くの事案では、別冊判例タイムズ38に記載されている修正要素が認められるか否かが、議論の中心になっています。
 
しかしながら、この別冊判例タイムズ38には、駐車場内の事故の過失割合の類型図が、【334】から【338】の5パターンしか掲載されていません。
車両同士の事故に限れば、【334】【335】【336】の3パターンしか掲載されていません。
 
【334】は、駐車場内の通路の交差部分における四輪車同士の出会い頭事故についての図であり、過失割合は、50:50とされています。
 
【335】は、駐車場内の通路を進行する四輪車と駐車区画から通路に進入しようとする四輪車との事故についての図であり、過失割合は、通路進行車:駐車区画退出車=30:70とされています。
 
【336】は、駐車場内の通路を進行する四輪車と通路から駐車区画に進入しようとする四輪車との事故についての図であり、過失割合は、通路進行車:駐車区画進入車=80:20とされています。
 
これらの3パターンで駐車場内の車両同士の事故の過失割合が全て整理できるのかといえば、そんなことは全くありません。
 
そもそも、駐車場というのは、形態が千差万別です。
大型スーパーの駐車場、コンビニエンスストアの駐車場、コインパーキングの駐車場と少し考えただけでも、全く異なる形態の駐車場が存在することが分かります。
また、駐車区画退出車と駐車区画進入車同士の事故も当然、容易に想定されるわけですが、パターンに入っていません。
 
したがって、これらの3パターンに当てはまらない駐車場内の事故類型については、過失割合を定める際に、協議が難航することが少なくありません。
 
我々弁護士は、過失の本質である予見可能性を前提とした結果回避義務違反の有無ないし程度について、議論をするわけですが、この過失概念自体、一般の方には分かり難いところです。
 
正直、交渉相手となる保険会社担当者も、過失の本質については、十分に理解していないことが少なくないです。
 
そのため、保険会社は、別冊判例タイムズ38の類型と異なっていても、とにかく、【334】【335】【336】の3パターンのいずれかに無理矢理当てはめて、過失割合を定めようとしてくることが少なくないです。
 
そうした場合、議論が全くかみ合うことはなく、協議が難航することになります。
結局、最後には、精度の高い過失割合の判断を求めて、訴訟を提起して、裁判官に判断を仰ぐことになってしまいます。
 
弁護士に依頼されているケースでは、訴訟により適正な解決を図ることが可能ですが、そうでない被害者の方は、実態にそぐわない過失割合での解決を余儀なくされているのではないかと推測されるところです。
 
駐車場内の事故における過失割合は、問題となりやすい一場面です。
駐車場内の事故に遭われて、保険会社の説明する過失割合に納得が行かない場合は、お気軽にご相談下さい。
 
弁護士 丹羽 錬
 

プロフィール

当事務所は、交通事故の被害者側に特化した法律事務所です。交通事故事件に関する十分な専門性・知識・経験を有する弁護士が事件を担当致します。
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