本件は、自賠責保険で受傷(傷害)が否認された被害者(49歳女性)について、札幌地方裁判所が頚椎捻挫の傷害を肯定したケースです(札幌地裁令和7年2月27日判決) 。
被害者の方にとっては、自賠責保険等で傷害と事故との因果関係が否定される(受傷否認)という厳しい状況でしたが、裁判所において正当な判断が示され、ご納得いただける結果となりました 。
事案の概要
本件は、片側2車線道路の第2車線を走行中の原告車両に、第1車線から車線変更してきた被告車両が衝突した事案です。
原告(49歳女性)は頚椎捻挫等の診断を受けて、約9ヶ月間の通院をしましたが、自賠責保険会社は、本件事故と傷害・治療との相当因果関係を否定しました。
その後、自賠責保険会社への再申請(異議申立)、自賠責保険共済紛争処理機構への調停申立を行いましたが、判断は覆りませんでした。
そこで、被害者の方と相談し、訴訟を提起することとしました 。
提訴から、約1年1ヶ月、6回の期日を経て、本件事故と受傷との相当因果関係が肯定される判断が示されました。
裁判所の認定のポイント
相手方(被告)は、本件事故はドアミラー同士の接触にすぎず、原告の身体に医療機関等での治療を要するほどの外力が加わったとは捉えられないとして、相当因果関係を熾烈に争ってきました 。
裁判所は、以下の事実や状況を考慮し、本件事故により原告に頚椎捻挫の傷害が生じたと認め、被告に対し、54万4724円の損害賠償金の支払いを命じました。
相当の衝撃があったこと
・原告車のドライブレコーダー映像から、衝突時に衝撃音と画面上の揺れが確認された。
・原告車は左方から被告車に衝突され、若干、右に振られた 。
・本件事故はドアミラー同士の接触にとどまらず、原告車の左フロントピラー、左フロントドアパネル、左フロントドアガラス等に損傷が生じ、被告車の右フロントサイドフィックスウインドも取り換えられたものであり、ドアミラー同士の接触事故にすぎないとはいえない。
これらの事実から、原告に相応の衝撃があったと認められました。
原告の体勢と予期せぬ衝撃
・原告はシートベルトを締め、両手でハンドルを持っていたが、被告車は車線変更時、合図をしていなかったため、原告は被告車の動きを予期し、これに備える体勢をとることができなかった。
これらの事実から、接触の態様や原告の体勢等も併せれば、頚部が揺れるなどして頚椎捻挫の傷害を負うのがあり得ないとはいえないと認められました。
不自然不合理ではない治療経過
・原告は事故当日、頚部痛等を訴えて受診し、頚椎捻挫と診断された。
・その後も継続的に頚部や肩甲骨部の痛み等の症状を訴え、内服薬や軟性カラーの処方を受け、効果を感じていた。
・事故前3年間は頚部の治療を受けていなかったことから、原告が訴えた症状が本件事故以外の原因で生じたとの疑いは生じない。
・外傷性の所見がないことや神経学的検査の未実施をもって、受傷の事実自体が直ちに否定されるものではない。
担当弁護士の所感
近時、自賠責保険が事故と受傷との因果関係を否定することが増えている印象があります。
自賠責保険で事故と受傷との因果関係が否定された(受傷否認)ケースであっても、訴訟においてドライブレコーダー映像、車両の損傷状況、受傷時の体勢、予期せぬ衝撃、そして通院経過などの具体的な事実を丁寧に主張立証することで、裁判所で判断が覆り、受傷が肯定されることがあります。
自賠責保険の判断がどうしても納得いかないという場合、全ての事案において、裁判所で判断が覆るわけではありませんが、証拠関係から、裁判所で覆る見込みが有るかどうかはある程度見通しが立つことも少なくないです 。
弊所では、事故態様や医学的な主張を詳細に行うことはもちろん、被害の実態を明らかにすることにも力を注いでいます 。
自賠責で受傷否認の判断をされていてお困りの場合、訴訟等を経て、適切な賠償の実現が可能となることもあります。
ご懸念がある場合、まずは一度ご相談ください。
弁護士 丹羽 錬