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桝田・丹羽法律事務所

ホステス、スポーツ選手など、特殊な職業の方の逸失利益について②

2015/06/10

ホステス、競輪選手、競艇選手、レーサー、パチンコ釘氏等、流行に左右される職業あるいは年齢的な制限のある職業等について、その職業に基づく収入を一定期間まで認めて、それ以後は、賃金センサス等の平均賃金を参考に逸失利益を算定するという手法を採用した裁判例は、以下のとおりです。
 
-ホステス-

ホステスに関しては、以下のとおり、30歳、33歳、35歳、45歳まで、ホステスとしての収入を認めて、それ以後は、賃金センサスによる収入で認定されています。
ホステスの具体的な態様次第ではありますが、裁判所は、概ね30代半ばくらいまでは、ホステスとして高額の収入を得られる蓋然性があると考えているようです。

【大阪地判平成10年10月19日判決】
死亡時28歳の女性の事案
33歳までホステスとしての収入(年691万4268円)
その後、67歳まで、賃金センサス女子学歴計30~34歳の平均賃金(年370万4300円)を基礎収入として逸失利益を認めています。
 
【福岡地判平成12年9月20日判決】
死亡時25歳の女性の事案
30歳までホステスとしての収入(年432万1600円)
その後、67歳まで、賃金センサス女子学歴計30~34歳の平均賃金(年384万4600円)を基礎収入として逸失利益を認めています。
 
【東京地判平成16年3月23日判決】
症状固定時時40歳の女性の事案
45歳まで女優及びホステスとしての収入(日額2万421円)
その後、60歳まで、賃金センサス全労働者全年齢平均賃金(年487万9700円)
その後、67歳まで、賃金センサス女子学歴計全年齢平均賃金(年329万4200円)を基礎収入として逸失利益を認めています。
 
【名古屋地判平成21年8月28日判決】
症状固定時22歳の女性の事案
35歳までホステスとしての収入(年477万1280円)
その後、67歳まで、賃金センサス全労働者全年齢平均賃金(年343万4400円)を基礎収入として逸失利益を認めています。
 
 
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ホステス、スポーツ選手など、特殊な職業の方の逸失利益について①

2015/06/09

交通事故により、後遺障害が残ってしまった場合、後遺障害の影響による労働能力の低下について、将来の逸失利益が損害として認められています。
 
一般的には以下のような数式で、逸失利益は算定されています。
 
事故前の現実収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間
 
労働能力喪失期間については、通常、67歳までと考えられています。
しかし、ホステスやスポーツ選手など、基本的に一定年齢までが、高収入で、一定年齢を過ぎると、若い頃の収入を維持することが困難ともいえる職業に就いている人々の労働能力喪失期間については、若干の検討が必要といえます。
 
実際、裁判例においては、流行に左右される職業あるいは年齢的な制限のある職業等については、その職業に基づく収入を一定期間まで認めて、それ以後は、賃金センサス等の平均賃金を参考に逸失利益を算定するという手法が散見されます。
 
平成11年11月22日付けのいわゆる三庁合同提言においては、高校卒業後すぐにプロ野球の選手となり、一軍で活躍している28歳の男子で、事故前の年収が6000万円の事例について、
「6000万円という高収入は、プロ野球選手だから得られるところ、少なくとも30歳代前半まではプロ野球選手として活躍できるものと考えられるから、28歳から32歳までの5年間は年収6000万円を基礎収入として、その後はプロ野球選手を引退することを前提として、何か統計的な数字があればともかく、そうでなければ、全年齢平均賃金を基礎収入として67歳までの逸失利益を算定する。」とされています。


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症状固定時期が争われる場合③

2015/06/08

-加害者側が、後遺障害診断書に記載された症状固定日には症状固定していないとして、その時点の可動域制限や状態より改善していることを主張して、逸失利益・後遺障害慰謝料の一部について、争ってくる場合-
 
加害者がこのような争い方をするのは、更に治療を継続すれば、より軽度な後遺障害しか残らない可能性があるからです。
特に治療方法として、手術などが考えられる場合には、大幅な改善もあり得ないわけではないため、問題となります。
 
このような場合、手術等の治療方法が身体に与える負担を考慮すると、手術等を受けたくないという被害者の意思を尊重する必要があります。
したがいまして、基本的には症状固定を肯定した上で、因果関係の制限又は、過失相殺による減額により公平な結論を導くというのが基本的な裁判所の考え方といえます。
 
この因果関係の制限や過失相殺による減額を行うべきか否かの考慮要素について、髙木健司裁判官は、2013年赤本講演録において
①これまでの治療経過及び症状経過
②今後の治療継続による改善の可能性の程度
③治療方法の一般性の程度
④治療方法の身体への負担の程度
⑤現在の症状
⑥医師の判断等
を挙げられています。
 
ただし、減額されるにしても、その対象は後遺障害に係る損害に限定されるべきです。
 
【東京地判平成24年3月16日判決】
この事案は、交通事故により橈骨遠位端骨折を負った被害者が、橈骨の変形治癒により、後遺障害等級10級に相当する可動域制限が残ったというものです。
 
加害者側は、変形矯正手術により、症状の改善が合理的に期待できるから、未だ症状が固定していないとして、症状固定の事実を争いました。
 
裁判所は、手術は身体への侵襲を伴うので、被害者に手術を強制することはできない等として、医師の判断のとおり症状固定に至ったことを前提に、10級の後遺障害等級に該当することを認めました。
 
しかしながら、手関節の変形癒合が生じたのは、適切な時期に手術を受けなかったことが原因であるとして、90%の限度で交通事故と相当因果関係のある損害と認めました。
 
このように、他に治療方法があるから未だ症状固定していないと争われたような場合には、前述の裁判官が挙げられている①~⑥の要素を丁寧に主張・立証して、加害者側が主張するような治療方法を選択しないという判断が合理的なものであることを裁判官に納得してもらう必要があるといえます。
 
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