交通事故の被害者側に特化した札幌の法律事務所

桝田・丹羽法律事務所

代車使用の認められる相当期間について

2015/05/13

交通事故により自動車が損壊された場合、自動車を修理したり、買い替えをする必要が出てきます。修理等のために自分の自動車を使用できない期間、代車を使用することがありますが、裁判上認められている代車使用期間(その期間の代車料金が損害として認められ、賠償を受けられるという意味です。)は、修理又は買い替えに要する「相当期間」です。
 
ここにいう「相当期間」とは、どのような期間を意味するのでしょうか。
 
この点、過去の裁判例の中には、社会通念上合理的な範囲内の修理期間又は買替期間に限って代車使用を認めるという裁判例もあります。
その場合、一般論として、修理の場合はおおむね2週間程度、買い換えの場合はおおむね1ヶ月程度と考えられています。
 
しかし、それらの期間の他に、加害者との交渉期間等も代車使用期間として認める裁判例も数多く存在し、多数派を構成しているように見受けられます。
後者の裁判例の一つとして、例えば、東京地判平成12年3月15日は、「加害者、ことに交通事故処理を専門的かつ継続的に担当する損害保険会社の担当者は、被害者に対して合理的な損害賠償額の算定方法について十分かつ丁寧な説明をなし、被害者の理解を得るように真摯な努力を尽くすべきであって、そのために時間を要し、その結果、修理に着手する以前の交渉期間中の代車料が生じたとしても、それが、加害者(又は損害保険会社担当者)の具体的な説明や交渉経過から見て、通常予測し得る合理的な範囲内にとどまる限り、加害者(損害保険会社)はその代車料についても当然に負担すべき責任を負うものというべき」と判示しています。
 
具体的にどの範囲で代車使用期間が認められるかは、交渉経緯を含む具体的諸事情により異なってくると考えられます。代車使用が認められる「相当期間」の判断は容易ではありませんので、専門家にお早目にご相談されることをお勧めいたします。


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重度後遺障害に伴う将来の治療費等について

2015/05/09

通常、交通事故に遭われた被害者が治療を受け、傷害が治癒した場合には治癒日までの治療費が損害として認められ、治癒せず後遺障害が残存した場合には症状固定日(治療を続けてもこれ以上の改善が望めない状態に至った日)までの治療費が損害として認められます。
 
しかし、高次脳機能障害等の重度後遺障害が残存してしまった被害者の場合、症状固定日後も治療を続けなければならないことがしばしばあり、そのような場合には、症状固定後の治療費も損害として認められます。
症状固定後の治療費として、治療を続けなければ症状が悪化するという場合の保存的治療に要する費用は、ほぼ認められています。

例えば、頭部外傷後の抗てんかん剤や抗けいれん剤の投与、身体硬化防止のための電気治療、尿導バルーンの交換洗浄といった治療を継続しなければ症状が悪化するという場合には、それらの治療のための費用は、交通事故による損害として認められています。これに対して、将来のリハビリ費用については、被害者の後遺障害の程度やリハビリ治療の内容及び効果、主治医の意見、症状固定時の治療内容等により、判断が分かれています。
 
症状固定後の治療費に関連して、治療のための通院交通費の問題もあります。将来治療費が損害として認められることが当然の前提になりますが、この前提が満たされたとしても、交通費の内訳(経路)、単価等に関する具体的な主張・立証がなされなければ、症状固定後の通院交通費は認められないため注意が必要です。
 
重度後遺障害が残存してしまった被害者の場合には特に、将来治療費及び通院費が極めて重要な意味を持ちますので、専門家にお早目にご相談されることをお勧めいたします。


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後縦靭帯骨化症を理由に素因減額を認めた裁判例-大阪地判平成21年6月30日-

2015/05/08


本件は、事故以前から存在した後縦靭帯骨化症を理由として、30%の素因減額が認められた事案です。
 

事故の衝撃

事故態様は、後部座席に被害者が乗車していたタクシーが、信号に従って前方に停止していた車両に衝突したというものです。
被害者は、事故発生時、後部座席で横になって眠っていたのですが、事故後、後部座席の足下に転落していました。
 
事故の衝撃の大きさについては、被害者側から、「9.4mの高さから落下したのと同等の外力」との立証がなされていますが、裁判所は、被害者が事故時に眠っており、後遺障害の発生メカニズムが正確には分からないため、後縦靱帯骨化症がない人でも、同様の後遺障害を負った蓋然性が高いとは結論づけられないとしています。
 

後遺障害の程度

第三頸椎レベル以下の知覚・運動・呼吸の完全麻痺 1級1号
 
非常に重い後遺障害です。
 

事故前の後縦靱帯骨化症の症状の発症の有無

事故前から後縦靱帯骨化症があったと認定されており、被害者側も、極めて軽微な症状があたことを認めています。
 

事故時の脊柱管狭窄率

事故の10ヶ月前のMRIにおいて、第二頸椎から第七頸椎にかけて、後縦靱帯の骨化があったと認定されており、最も狭い部分の狭窄率は50%と認定されています。
本件事故直後の狭窄率は65%程度と認定されています。
狭窄の程度は、かなり進んでいたと評価できます。
 

素因減額の理由

裁判所は、以下のような理由を挙げて、30%の素因減額を認めました。
①事故前から後縦靱帯骨化症があったこと
②本件事故前の狭窄率が50%であったこと
③本件事故直後の狭窄率が65%であったこと
④後部座席に横たわった状態から、足下に落下した際に、頸髄損傷を発症した蓋然性が高く、事故前からの後縦靱帯骨化症の影響を否定できないこと
 

コメント

本件は、事故前から後縦靱帯骨化症の症状が発症しており、事故時の狭窄率も50%と狭窄が進んでいたことからすれば、50%以上の素因減額も想定されうる事案です。
 
ただ、被害者側が、事故態様について、「9.4mの高さから落下したのと同等の外力」として、事故の衝撃の大きさを立証しています。
事故時の被害者の身体の動きについては、詳細には分からないのですが、事故の衝撃がそれなりに大きいということを立証したことが、功を奏したように思われます。
 
裁判官は、事故態様と後遺障害のバランスで、ざっくりとした素因減額の心証を持つように思われますので、事故態様が大きい場合には、そのことを科学的に丁寧に立証する必要があるといえます。


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