交通事故の被害者側に特化した札幌の法律事務所

桝田・丹羽法律事務所

  • 後遺障害

交通事故の傷病により成年後見の申立を余儀なくされる場合について

2018/09/28

CIMG2260.JPGのサムネール画像のサムネール画像のサムネール画像のサムネール画像交通事故の被害者の方が、脳外傷等の傷害を負い、判断能力を失う場合があります。
判断能力を欠く者が行った法律行為は無効と解されており、そのため、被害者が加害者と示談をしたり、加害者に対して民事訴訟を提起するような場合、成年後見の申立を余儀なくされることがあります。
もっとも、成年後見の申立をするに際しては、費用がかかります。
具体的には、①成年後見開始の審判申立費用、②成年後見人に対する報酬、③成年後見開始の審判申立手続を弁護士に依頼した場合の弁護士費用などが発生します。
 
これら①~③の費用は、加害者に対して請求することができるでしょうか。
 
①について
この中には申立手数料、登記手数料、予納郵券、鑑定費用や、戸籍謄本、住民票、登記されていないことの証明書、診断書等の取得費用が含まれます。
これらの費用については、従前の裁判例上、事故と相当因果関係のある損害として認められています。
 
②について
従前の裁判例上、事故と相当因果関係のある損害として認められています。
ただ、その算定方法については、以下の3通りがあり、検討が必要です。
A)平均余命までの成年後見人報酬相当額を相当因果関係のある損害と認め、症状固定時を基準に中間利息を控除したもの
B)事故時を基準に中間利息を控除したもの
C)口頭弁論終結時までの部分は中間利息を控除せず、その後は症状固定時を基準に中間利息を控除したもの
 
③について
従前の裁判例上、認めるものと認めないものがありますが、認めない傾向にあるといえますので、この点については、特に注意が必要です。
 
事故被害者の成年後見の申立については、いろいろと検討すべき事項がありますので、お悩みがございましたら、お気軽にご相談ください。
 
弁護士 桝田泰司


早期に症状固定の診断を受けてしまった事案について

2018/01/09

benngoshi niwa.JPGのサムネール画像のサムネール画像のサムネール画像
沢山の交通事故事案を取り扱っていますと、あまりないケースですが、被害者の方が症状を強く訴えているにも関わらず、医師が短期間で症状固定の診断する事案を目にすることがあります。
 
最近もそういった方がご相談にいらっしゃいました。
 
その事案は、修理費が30万円を超える程度の追突事故でした。
被害者の方は、頚部痛、上肢の痺れ等の症状を医師に強く訴えているにも関わらず、医師が約2ヶ月で症状固定の診断をしていました。
大変お困りになって、治療を続けたいとのことでご相談にいらっしゃいました。
 
正直、医師が治療の必要がないと診断しているため、弁護士としても非常にやりにくいケースです。
 
実際に、その医師に話を伺いましたが、十分に了解できる明瞭な説明はなく、「自賠責での治療は終了」の一点張りで、協力を得ることは出来ませんでした。
 
しかし、事故態様、症状、被害者の方のご年齢からして、2ヶ月の通院期間はあまりにも短すぎましたので、加害者の保険会社と交渉して、他院に転院して通院を継続することを認めてもらいました。
 
もっとも、転院した他院でも3ヶ月程度で、症状固定と診断されてしまいました。
加害者の保険会社と交渉しましたが、流石にそれ以上の通院の継続の了承は取れませんでした。
 
それで、被害者の方と十分に協議して、争いにはなるものの、自己負担で更に他院に通院して、最終的に治療費については、加害者の保険会社に請求してみることとしました。
この場合、最終的に自己負担した治療費を相手方保険会社が確実に支払うかは分からないということになりますが、その点についても十分に説明をして、ご理解頂きました。
 
後遺障害については、更に転院した病院で後遺障害診断書を最後に書いてもらえれば、その後遺障害診断書で申請することと致しました。
 
被害者ご本人は、症状が根強く継続しており、治療を受けることで多少なりとも改善する状況が続いていましたので、最終的に事故から1年半ほど通院されて、その時点で症状固定の診断を受けることとなりました。
転院した先の病院の医師が後遺障害診断書を作成して下さるとのことでしたので、医師に後遺障害診断書を作成してもらい、自賠責保険会社に後遺障害の被害者請求を致しました。
 
そうしたところ、最終的に後遺障害等級14級9号の認定を受けることができました。
 
この事案は、最初の病院の医師の判断の時点で、諦めてしまっていたら、後遺障害の認定を得ることはできませんでした。
また、2番目の病院の症状固定時に後遺障害の申請をしていても、恐らく認定にはなっていなかったと予想されます。現状、後遺障害認定を行っている損害保険料率算出機構では、通院期間が6ヶ月に満たない場合には、認定を得ることが困難だからです。
 
治療費が全て自己負担になり、かつ後遺障害の認定を得られない可能性があるものの、それでも症状に苛まれていたため通院を継続したが故に、後遺障害の認定が得られたケースでした。
 
我々弁護士も、医師が「治療が必要」と判断してくれているケースでは、保険会社と強く交渉をしていくことができます。
 
しかしながら、医師が治療が必要ないと診断しているケースは、かなり苦しいです。
 
ただ、個々の医師の判断が、常に正しいわけではありません。
残念ですが、交通事故での治療についての理解が不十分な医師が一部に存在することも事実です。
 
どう考えてもおかしいという程度に、早期に治癒だとか症状固定の診断をされてしまった場合であっても、状況によっては、転院して通院を続けるなどして、後遺障害の認定を受けられることもあります。
 
事故の大きさに比べて、医師からあまりにも早い段階で治癒や症状固定の診断を受けてしまったという場合でも、工夫次第で対処できる場合がございます。
事故の大きさの割に、あまりにも早い時期に治療終了とされてしまったような場合には、お気軽にご相談下さい。
 
弁護士 丹羽 錬
 

同一部位に関して、過去の交通事故の際、既に後遺障害の認定を受けている場合について

2017/09/24

CIMG2260.JPG交通事故により、通院を継続しても、最後に後遺症が残ってしまうことがあります。
最近、以下のようなご相談を受けました。
10年以上前の交通事故(1回目)によって後遺症が残存してしまい自賠責保険会社による後遺障害等級認定を受けていたところ、今回の交通事故(2回目)により同じ部位を痛めてしまい症状が根強く残存しているというご相談です。
このような場合、再度、同一部位に関して、自賠責保険における後遺障害としての認定を受けることができるのでしょうか。
 
この点、自賠法施行令によれば、同一部位に新たな障害が加わったとしても、その結果、既存の障害が該当する等級よりも現存する障害の該当する等級が重くならなければ、自賠責保険における後遺障害として評価することはできないとされています。
 
自賠責保険の後遺障害は永続性を前提としていますので、原則的には、このような考え方でやむを得ないところです。
 
ただし、1回目の交通事故による残存した症状の程度が比較的軽度であり、1回目の交通事故と2回目の交通事故との間の間隔がかなり空いているような場合には、注意が必要です。
 
例えば、「ある人が10年前の交通事故により頸部の神経症状(後遺障害等級14級)の後遺障害を残したが、今回の交通事故により頸部打撲等の傷害を負い頸部の神経症状(後遺障害等級14級)の後遺障害を残した」というような場合を考えてみます。
 
この場合、既存の後遺障害が該当する等級と現存する後遺障害の該当する等級とが同じですので、自賠責保険における後遺障害として評価されないと考えられます。
 
しかし、頸部の神経症状(後遺障害等級14級)の場合、賠償実務上、症状固定日から5年から10年程度で就労への影響がほとんどなくなることが多いと考えられていて、賠償金算定時の逸失利益についても、通常は、3~5年程度しか認められていません。
そのため、1回目の交通事故発生から5年以上が経過しており、実際に、2回目の交通事故発生時点で、1回目の交通事故による後遺症による影響がほとんどないような状態であった場合には、訴訟を経ることで再度、後遺障害等級14級の認定を受けられる可能性があります(自賠責保険は認めません。)。
 
ご相談者のケースでは、自賠責保険では後遺障害等級の認定は受けられませんでしたが、民事訴訟を提起して主張・立証を尽くすことにより、後遺障害等級の認定を前提にした裁判上の和解(和解金約700万円)が成立しました。
 
複数回、交通事故に遭われている被害者の場合には、注意すべき事項が多いですので、弁護士に相談されることをお勧めいたします。
 
弁護士 桝田 泰司

プロフィール

当事務所は、交通事故の被害者側に特化した法律事務所です。交通事故事件に関する十分な専門性・知識・経験を有する弁護士が事件を担当致します。
<<2023年7月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          

最新記事

桝田・丹羽法律事務所

このブログを購読