 
	ここ数年、軽微事故に対する自賠責保険の対応に変化が見られるように感じています。
	全国の交通事故事案を数多く取り扱っている弁護士と話をすると、ほぼ必ず話題に上がってきます。
	札幌だけではなく全国的な傾向のように思われます。
	 
	恐らくは、自賠責保険の損害調査を一元的に取り扱っている損害保険料率算出機構の方針が変化したのではないかと推測されます。
	 
	具体的には、軽微事故の治療費が最初から拒絶(否認)されるケースというのが、以前よりも散見されるようになってきています。
	つまり、事故に遭って通院しても、一切、自賠責保険金が支払われないというケースです。
	(あるいは、非常に短期間、病院の治療費だけ支払われて、整骨院の施術費は否認されるというケースも散見されるようになってきています。)
	 
	以前は、軽微事故に関して、加害者の任意保険会社が支払を拒絶した後であっても、自賠責保険会社に請求を切り替えれば応じてくれることが多かったです。
	被害者の救済という意味で、自賠責保険は有効に機能していました。
	 
	しかし、近時は、加害者の任意保険会社が最初の1ヶ月しか治療費の支払いには対応しないと、明言するようなケースでは、2ヶ月目以降の治療費を自賠責保険会社に請求しても支払を認めないケースが散見されるようになってきています。
	自賠責保険の被害者救済という機能が弱まってきており、大変残念なことと感じています。
	 
	類型としては、以下の1~3のような場合が支払拒絶されるリスクがあるように思料しております。
	 
	1 軽微に見える事故類型
	①ミラー事故(被害車両と加害車両のミラー同士が衝突)
	②クリープ走行(加害車両がクリープ走行で衝突)
	③駐車場内での加害車両のバックによる衝突事故
	 
	2 修理費が10万円以下
	 
	3 事故態様に被害者と加害者との間で争いあり
	 
	1~3のうち、2つに該当するようなケースは、最近の自賠責保険の傾向からして、支払が受けられるか否か、かなり危ういように思われます。
	 
	自賠責保険から支払拒絶されてしまうと、加害者の任意保険会社は、それ以後、賠償金を1円も支払おうとしなくなります。
	場合によっては、既に支払った治療費の返還を求めてくることもあります。
	 
	裁判所に持ち込んだ場合も、自賠責保険が否認したケースでは、かなり苦しい戦いになります。
	裁判所は、一般に自賠責保険より柔軟性があるといえますが、裁判官による当たり外れも大きく、見通しが立てにくい側面があります。
	 
	そのため、上記の1~3のうち、2つに該当するような場合で、任意保険会社から治療費の支払いについて、短期間で打ち切りを通告されたような場合は、慎重に対処する必要があります。
	 
	一見軽微に見えてしまう事故で、短期間で治療費の支払いの打ち切りを通告されたような場合は、対処が難しいケースが多いですが、過去の事例と比較するなどして、事案に応じた助言ができるかと存じます。お気軽にご相談下さい。
	 
	弁護士 丹羽 錬