骨粗しょう症による素因減額

骨粗鬆症とは、骨強度の低下によって、骨折のリスクが高くなる骨の障害です。
現在、日本での骨粗鬆症患者は1000万人を超えるといわれています。
そのうちの80%にあたる800万人が女性といわれており、年齢別でみると、50歳以上の女性の4人に1人が骨粗鬆症になっています。
骨粗鬆症の診断は、脆弱性骨折の有無を検討し、これがない場合には、腰椎骨塩量、大腿骨頚部あるいは他の部位の測定値で20歳から44歳の若年成人平均値をもとに70%未満か否かで診断するとされています。
 

裁判官の見解

鈴木裕治裁判官は平成21年版赤本講演録において、
「骨粗鬆症に関する裁判例は、以上のような病態や有病率もあってか、高齢の被害者については概ね減額していません。他方、若年者の場合には、疾患に該当するとし、減額割合も比較的高い傾向にあるといえるでしょう。」と述べられています。
 
小河原寧裁判官は平成26年版赤本講演録において、骨粗鬆症を原因とする素因減額の判断要素を挙げられています。
①事故の態様や衝撃の規模(衝撃が小さいほど素因減額の可能性が高まる)
②事故前の被害者の状況(事故前から症状が発現していれば、素因減額の可能性が高まる)
③被害者の年齢(若年であれば、素因減額の可能性が高まる)
 

骨粗鬆症を理由に素因減額を認めた裁判例(さいたま地裁平成23年11月18日判決)

この事案は、被害者が急斜面を進行してきた自転車と衝突して、左大腿骨頚部骨折の傷害を負ったというもので、最終的に20%の素因減額がなされました。
ただし、被害者の35歳女性は、身長150センチに対して、体重が28キロしかなく、鑑定の結果、左大腿骨頚部の骨密度は、70歳から75歳に匹敵すると判断されています。
 

まとめ

骨粗鬆症については、裁判例や裁判官の見解からすると、高齢者に関しては、容易に素因減額が認められることはなく、若年者についても、かなり限定的な場合にのみ、素因減額なされる可能性があるといえます。