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桝田・丹羽法律事務所

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遷延性意識障害

【目次】
1 遷延性意識障害とは?
2 転院
3 後見
4 損害賠償

5 遷延性意識障害における余命期間について

6 遷延性意識障害における生活費控除について
7 遷延性意識障害における在宅介護について
8 遷延性意識障害における在宅改造等費用について
9 遷延性意識障害における定期金賠償について

遷延性意識障害とは?

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遷延性意識障害とは、頭部外傷等により昏睡状態に陥り、開眼できるまでになったものの意思疎通が喪失した身体状態のことをいいます(植物状態といわれることもありますが、被害者は人であり「物」ではありませんので、当HPでは使用致しません)。
遷延性意識障害は、主として交通事故等を原因とする頭部外傷等により発症します。
日本脳神経外科学会では、以下の6項目が治療にもかかわらず、3ヶ月以上続いた場合を「遷延性意識障害」と定義しています。
 
1 自力移動が不可能である。
2 自力摂取が不可能である。
3 便・尿失禁がある。
4 声を出しても意味のある発語が全く不可能である。
5 簡単な命令にはかろうじて応じることもあるが、それ以上の意思疎通は不可能である。
6 眼球はかろうじて物を追うこともあるが認識できない。
 
自賠責保険の後遺障害等級においては、通常、常時介護を要する後遺障害として、別表1の1級1号に認定されます。
交通事故により被害者の方が遷延性意識障害の状態に陥った場合、ご本人はもちろんのこと、ご家族も精神的ダメージに加えて、多大な介護の身体的負担等、大変な苦労に直面せざるを得ません。
遷延性意識障害においては、全国的な家族会が存在しますので、早い段階で、将来の在宅介護等についてアドバイスを受けるのが望ましいです。
 
遷延性意識障害の状態からの回復事例については、以下の書籍が参考になります。
▶ 僕のうしろに道はできる(三五館)
▶ がんばれ朋之!18歳(あけび書房)

 
遷延性意識障害の状態に陥ったご本人の意識状態についても「僕のうしろに道はできる(三五館)」や「昏睡Days(書肆侃侃房)」に記述があり、外部の状況を明確に認識されている場合もありますので、ご家族の方はご一読されることをお勧め致します。

弊所で取り扱った遷延性意識障害の解決事例をご紹介いたします。
解決事例-遷延性意識障害-
 

転院

遷延性意識障害の方は、長期間の入院・加療が必要となりますが、当初の入院先は3ヶ月が経過すると診療点数の関係等から転院を促してきます。転院しても、転院後3ヶ月経過するとやはり、更なる転院を促してきます。
遷延性意識障害に陥った被害者の方のご家族は、転院の問題に直面することとなります。
 

成年後見

交通事故により、被害者が遷延性意識障害に陥った場合、本人は意思を表示することができなくなるため、加害者側に損害賠償請求するにあたっては、被害者が未成年である場合を除いて、成年後見の申し立てをする必要が出てきます。
ご家族が成年後見人に就いて、そのご家族が被害者に代わって、加害者側に損害賠償請求をしていくこととなります。
当事務所では、成年後見の申し立てもサポート致しますので、お気軽にご相談下さい。
 

損害賠償

遷延性意識障害被害者の方の損害賠償においては、以下のとおり、主として問題となりうる争点が5点、存在します。
加害者側の保険会社は、支払いを最小限に抑えたいがために、各争点について、被害者の方にとって、最も不利な主張をしてくることが少なくありません。万が一、ご家族が遷延性意識障害に陥ってしまったような場合には、示談の前に必ず弁護士に相談されることをお勧め致します。
遷延性意識障害に陥った被害者の方の場合、最終的な賠償額が3億円を超えるようなことも少なくありません。交通事故に精通した弁護士に依頼するか否かで、最終的な賠償金に数百万円、数千万円の影響を与えることがありますので注意が必要です。

遷延性意識障害における余命期間について

逸失利益や将来介護の算定に当たっては、被害者の方の余命期間を定めることが不可欠となってきます。本来、人の余命期間を定めることは、不可能ですが、交通事故における賠償金の算定に当たっては、通常、厚生労働省大臣官房統計情報部作成の「簡易生命表」に基づいて、余命期間を便宜的に定めています。
例えば、30歳の男性であれば、余命期間は50.69年(平成24年現在)ということになります。
 
当然ではありますが、余命期間が長ければ長いほど、賠償金の額は大きくなっていきます。
そこで、賠償金の額を低く抑えるべく、保険会社は、「遷延性意識障害となった人の平均余命は、健常者と比べて短いのであって、おおよそ10年程度である」との主張をしてくることがあります。
保険会社は、一定のデータや医師の意見書を基に主張してくることもあり、実際に、遷延性意識障害の被害者の平均余命を症状固定から12年とする判断を是認した最高裁判例も存在しますので、訴訟においては的確に反論していく必要があります。
 
「遷延性意識障害となった人の平均余命は健常者より短い」などという主張は到底、認められるべきものではありませんし、実際、裁判例の多くは、そのような保険会社側の主張を否定しています。

遷延性意識障害における生活費控除について

生活費控除とは、通常、交通事故で亡くなった方の逸失利益を算定する際に使われる概念です。被害者の方が亡くなられた場合には、当然ではありますが、食費や被服費等の生活費が掛からなくなります。そこで、被害者の生前の収入を基に算出した逸失利益から、生活費に相当する金額を控除して、正確な逸失利益を算定することとしています。
 
保険会社は、この考え方を遷延性意識障害の被害者に対しても適用しようとしてくることがあります。つまり、「遷延性意識障害の被害者は基本的に寝たきりなのだから、被服費や交通費、通信費、交際費等は、ほぼ支出を要しないはずだ」として、生活費相当額を逸失利益から控除すべきと主張してくるのです。
 
そもそも、遷延性意識障害の被害者の生活費が、健常人より少ないとは言い切れませんので、このような主張は、通常、裁判では認められない傾向にあるのですが、一部、遷延性意識障害の事案において、一定額を生活費控除として認める裁判例も存在しますので、的確に反論していく必要があります。
 

遷延性意識障害における在宅介護について

交通事故により被害者が遷延性意識障害に陥った場合、一般的には症状固定後においても、医療機関等への入院を継続しているケースが多いです。
しかしながら、ご家族が、被害者を慣れ親しんだ自宅にて、介護していきたいと考えるようになることも少なくありません。現実問題としても、病院や施設での定型的な介護より、自宅でのきめ細やかな介護の方が、被害者にとっても望ましいということもあります。
さらには、病院に入院している限り、他の患者さんとの接触を完全に断つことは難しいため、肺炎等の院内感染のリスクもないとはいえません。
そこで、ご家族の意向を前提として、自宅介護による損害賠償請求をしていくことがあります。自宅介護の場合は、病院や施設での介護に比べて、賠償額が倍くらい異なってくるのが通常です。
このため、支出額を抑えたい保険会社は、医療機関や施設での介護を前提にすべきであると主張してくるのです。
 
本来的には、被害者が自宅にて生活することを加害者側の保険会社に咎められる理由は一切ないのですが、自宅介護を否定した裁判例も存在しますので、やはり、的確に反論していく必要があります。
具体的には、自宅介護できるだけの人的環境(訪問ヘルパー、訪問看護師等)・物的環境(バリアフリー化、リフター設備等)が十分であること、容態が急変した場合にも迅速に対応できる環境が整っていること、現実に自宅での介護が可能であると主治医が判断していること等を主張・立証していくこととなります。

示談交渉時には、病院や施設で介護をしていても、症状が落ち着いてくると自宅に連れて帰りたいと考えられるご家族が多いです。
その時に、既に施設での介護を前提とした示談をしてしまっていると、金銭的な負担がハードルとなって物理的に自宅での介護を選択できなくなってしまいます。
示談する前に、必ず弁護士に相談することをお勧め致します。

 

遷延性意識障害における住宅改造等費用について

自宅介護を実現するには、バリアフリー化やリフター設備の設置といった介護住宅への改造が必要となり、また、パルスオキシメーター等の医療機器の設置も必要となります。これらの費用が1000万円を超えることも少なくないです。
支出を抑えたい保険会社としては、この住宅改造等費用についても支出しないですむように、医療機関や施設での介護を前提とすべきであるとの主張をしてくることがありますので、やはり、的確に反論していく必要があります。

遷延性意識障害における定期金賠償について

交通事故における損害賠償は、訴訟終了後の一括払いによる一時金賠償とされるのが通常です。
定期金賠償とは、将来生ずる損害を、その発生の都度定期的に支払うことを命じる内容です。具体的には、「死亡する月までの間の毎月末日限り金25万円を支払え」というような判決文となります。
 
保険会社は、遷延性意識障害の被害者の余命は健常人より短いという前提に立っていますので、そうであれば、支出額がより少なくなるであろう定期金賠償を主張してくるのです。
実際、定期金賠償を採用すれば、本来的には予測が困難な将来の損害を無理に、裁判時に認定する必要がなく、被害者の被る現実の損害により近くなる等の肯定的な側面も存在することから、被害者が一時金賠償の請求をしているにもかかわらず、保険会社の主張を認めて、定期金賠償を命じた裁判例も一部存在します。

しかしながら、定期金賠償においては、保険会社の将来の経営破綻のリスクを被害者が負わなくてはならないこと、将来も長期間にわたって加害者側の保険会社と関わりと持ち続けなければならないこと等、被害者側には大きなマイナス面がありますので、保険会社の主張に的確に反論していく必要があります。