死亡事故

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このページを読まれている方は、交通事故でご家族を亡くされた方かと存じます。
心より故人のご冥福をお祈り申し上げます。
当事務所においては、交通事故被害者及びそのご家族の側に立ち、共に加害者及び保険会社に立ち向かうことで、少しでもご家族が前向きな気持ちを持って生活していくことができるようサポートさせて頂きたいと考えております。
お気軽にご相談頂ければと存じます。
 
以下、死亡事故の実情、留意すべき点等を記載しましたのでご確認下さい。

死亡事故とは

死亡事故とは、交通事故によって、被害者が亡くなる事故のことをいいます。
一般に出回っている交通事故死者数は、交通事故発生後24時間以内の死者数を示している場合が多いです。
 
交通事故では、一定期間入院されて、その後、亡くなられるケースも少なくないので、交通事故発生後30日以内の死者数の方がより正確に実態を現しているといえます。
過去3年間の全国の交通事故での死亡者数は以下のとおりです。

   24時間以内  30日以内
平成27年  4117人  4885人
平成28年  3904人  4698人
平成29年  3694人    4431人
          
事故後、事故で負った傷病を苦にうつ病を発症し、その後、自殺されるようなケースも稀にございます。
交通事故と死亡との間の因果関係が肯定される事故については、死亡事故といって良いものと思料致します。
 

歩行中の死亡事故が最も多い

平成29年の状態別の交通事故死者数の割合は以下のとおりです。
歩行中の死亡事故が、全体の3分の1を超えており、最も割合として高くなっています。
当然ですが、歩行中は極めて無防備な状態ですので、高速度の車両に衝突されれば死に至る可能性が高くなります。
 
歩行中   36.5%
自動車乗車中   33.1%
自転車乗車中   13.0%
自動二輪車乗車中   12.1%
原付乗車中      5.0%
その他      0.4%

歩行中は、特に交通事故に気を付ける必要があることが分かります。
青信号の横断歩道を歩行中に、左折車や右折車に衝突されて亡くなられる方も少なくありません。

当事務所にご相談にいらっしゃる被害者の方は、驚くほど多くの件数、赤信号無視の加害者に衝突されています。
横断歩道を渡る際には、青信号であるからといって、無条件に渡るのではなく、左右を確認した上で、渡るようにする必要があるといえます。


65歳以上の高齢者の死亡事故が多い

平成29年の年齢層別の死亡者数をみると、65歳以上が2020人と、全体の54.7%を占めています。
 
人口10万人当たりの死亡者数をみても、50歳代から人数が増え始めて、60歳代(3.1人)、70歳代(5.6人)、80歳代(8.6人)と年齢が上がるに連れて、人数が増える傾向が確認できます。
 
これは、高齢者になるほど、身体が脆弱となり、同じエネルギーの事故に遭った場合でも、死に至る確率が高まることにあると考えられます。
高齢になるほど、交通事故には気を付ける必要があるといえます。
 

北海道の交通事故死者数の推移

北海道の交通事故死者数は以下のとおりです。
全国平均と同様に、年々、死者数は減少しています。
しかし、未だに年間100人以上の方が交通事故で命を失っている状況にあります。

平成27年  177人
平成28年  158人
平成29年  148人

札幌市の交通事故死者数の推移

札幌市の交通事故死者数は以下のとおりです。
減少傾向は見られますが、年によって、変動が見られる状況です。
 
平成27年  26人
平成28年  31人
平成29年  23人 

平成29年は、65歳以上が13人で約6割を占めています。
事故態様では、人対車が、13人でこちらも約6割を占めています。

 

死亡事故においてご家族が最初になすべきこと

交通事故により、ご家族の命を失うという出来事は、ある日突然やってきます。
病気などにより命を失うケースとは異なり、周囲のご家族は、全く心の準備ができていない状況で、その事実を知らされることとなります。
ご家族のショックの大きさは計り知れないものがあり、その心中や察するに余りあります。
そのような大きな精神的なダメージを被っている状況の中、一体何をどうすればよいのか、それ自体、分からない場合が多いことと存じます。
法律的な側面で、ご家族ができることは、加害者の責任を追及することに尽きるといえます。
 
加害者は、以下の3つの責任を負います。
1 刑事責任
2 行政責任
3 民事責任
 
それぞれについて、ご家族の方ができることを、以下ご説明致します。
 

刑事責任

いわゆる懲役刑、禁固刑、罰金等の刑事罰を加害者が負う責任です。
 
交通事故における死亡事故は、以下の2つの罪のいずれかに該当します。

【過失運転致死罪(自動車運転処罰法5条)】
・通常はこちらに該当します。
・法定刑
 7年以下の懲役または禁固、100万円以下の罰金
【危険運転致死罪(自動車運転処罰法2条)】
・加害者が飲酒、無免許運転などの危険な運転をしていた場合には、こちらに該当することがあります。
・法定刑
 1年以上20年以下の懲役

交通事故による刑事責任は近時、厳罰化される傾向がみられますが、亡くなられた被害者が1人で、加害者の飲酒運転ではないような場合、執行猶予判決が下される傾向にあるのが現実です。
 
それだけに、ご家族の心情を刑事裁判に反映させる必要があるともいえます。
被害者のご家族は、警察の事情聴取を受けることになりますが、その際には、被害に関する心情をありのままに伝える必要があります。厳罰を望まれるのであれば、そのことをしっかりと調書に記載してもらう必要があります。
 
また、判決前に加害者と示談してしまうと、処罰感情、被害感情が弱いと裁判官に判断されてしまいますので、示談の時期については慎重に考える必要があります。
さらに、後述のとおり、被害者参加手続きにより、刑事裁判に、ご家族自ら直接参加して、裁判官や被告人に直接疑問や思いを伝えることもできます。
 
 

行政責任

死亡事故の場合は、違反点数に13点~20点の点数が付加されますので、通常、免許取り消しの処分となります。
 
免許取り消しの処分に該当する場合でも、加害者の責任が軽いと判断されると、欠格期間が短くなるなど処分の内容に影響しますので、事故時にご家族が同乗されていたような場合には、事故状況を正確に警察に伝える必要があります。
 

民事責任

当然ではありますが、加害者は被害者に対して、損害賠償責任を負います。
ご家族としましては、被害者の生前の生き方に見合った適正な賠償を受ける権利があります。
 
しかしながら、甚大な精神的ダメージを負っている状況下で、加害者の保険会社と交渉していくのは大きな心労となります。
 
その上、そもそも人が亡くなった場合の適正な賠償額というものが、一般の方には判然としないことが多く、十分に納得できる交渉をすることは困難です。
 
死亡事故における賠償額は一般にかなりの高額となります。
交渉時の僅かな差が、最終的な賠償額に数千万、時には1億円を超えるような影響を与えることもあり得ます。
示談前には必ず法律事務所に相談されることをお勧め致します。
 

示談交渉はいつから開始したら良いのか

示談交渉は一体いつから開始すれば良いのでしょうか。
ご家族が亡くなられて、すぐに民事の示談交渉を進めようとされる方は少ないです。
 
加害者の保険会社においても、通常は、葬儀が終わり四十九日を過ぎた頃から、動き出すことが多い印象です。
 
しかしながら、被害者のご家族においては、早期示談により、加害者の量刑が軽くなることを避けるべく、加害者の刑事処分が定まってから示談交渉を開始されることも多いです。
 
加害者が自動車保険に加入している場合、刑事手続きが終わる前に示談が成立していなくても、いずれ相応の賠償金が支払われて示談が成立することがほとんどです。
そのため、刑事事件の裁判官は、そのことを織り込んで量刑を定めているものと推測されます。
 
しかしながら、早期に示談が成立していることは、ご家族の処罰感情、被害感情が弱いと捉えられる恐れがあり、加害者の量刑に少なからず影響を与えるものと思料されます。
 
したがいまして、示談交渉を進めるタイミングについては、慎重に考える必要がございます。
 

誰が賠償金を請求できるのか

死亡事故の場合、当然ですが被害者の方は亡くなられていますので、賠償金を請求することができません。
 
そこで、残されたご家族が、被害者の損害賠償請求権を相続して、請求することになります。
したがいまして、被害者の相続人が賠償金を請求するということになります。
 
被害者に配偶者と子がいた場合は、配偶者と子が相続人となり、被害者の賠償金を請求することになります。
 
被害者に配偶者のみがいて、子がいない場合は、配偶者と被害者の親が相続人となり、被害者の賠償金を請求することになります(親がいない場合は、配偶者と被害者の兄弟が相続人となります。)。
 
被害者に配偶者も子もいない場合は、被害者の親が相続人となります(親がいない場合は、兄弟が相続人となります。)。
 
なお、被害者のご両親は相続人とならない場合でも、固有の慰謝料を請求することができます。
 
内縁の配偶者においても、固有の慰謝料を請求できるとされていて、1000万円を超える慰謝料が認められた裁判例も存在します。

賠償金は幾ら支払われるのか

現時点で、裁判所で死亡事故の損害額として認定された最高額は、5億2853万円といわれています(横浜地裁平成23年11月1日判決。詳細はこちらへ)。
これは、被害者が、41歳の開業眼科医の方で、事故前4年間の平均年収が5548万円と認定されたケースです。
逸失利益のみで、4億7800万円余りと認定されています。
 
しかし、通常、年収が5000万円を超えるようなことは、まず、ありませんので、ここまでの損害が認定されることは極めて稀です。
 
多くの事案では、総額で数千万円ということが多く、年収が多い方で、1億円を超えるケースが出てくるという印象です。
参考として、近時の死亡事故で裁判所が認定した損害額を記載致します。
(弁護士費用、遅延損害金は計上しておりません。)
 
  年齢  性別  属性   損害額 
 
 
 
 
 
 
 
 

賠償金として、何を支払ってもらえるのか

交通事故の賠償金は、治療費、慰謝料、逸失利益等の項目ごとに金額を算定して、それらを合計することになります。
以下、項目ごとに詳述致します。
 

逸失利益

逸失利益とは、被害者の方が死亡せずに生きていたとしたら、その後の就労可能期間に得ることができたであろう収入のことをいいます。
以下の計算式により算定されるのが通常です。
 
基礎収入×(1-生活費控除率)×就労可能期間に対応するライプニッツ係数
 
逸失利益の算定のベースとなる基礎収入は、給与所得者の場合は事故前の現実の収入であり、事業所得者の場合は事故前の申告所得額となるのが原則です。
専業主婦の場合は、亡くなられた年の賃金センサスの女性の学歴計・全年齢均賃金をベースとします。
 
一般的には、亡くなられた時から、67歳までの間が就労可能期間とみなされます。
高齢者の場合は、67歳までの期間と平均余命の半分の期間のいずれか長い方が就労可能期間とみなされます。
 
被害者が亡くなられた場合には、存命であれば必要であった生活費を支出することがなくなるため、亡くなられた後の生活費相当額を逸失利益の算定の際は控除することとなります。
個別具体的に将来の生活費を算定することは、事実上不可能であることから、便宜的に収入の30%~50%が生活費控除率とされて、控除されています。
 
基礎収入、就労可能期間、生活費控除率、いずれも争われることが少なくなく、最終的な賠償額に大きな影響を与える事項ですので、的確な主張・立証をしていくことが必要です。
 
被害者が死亡時に年金を受けていたような場合には、年金部分の逸失利益も請求する必要がありますので、注意が必要です。
 

年少者では、大卒を主張することで、逸失利益の額が下がることがある

大学進学前の年少者の逸失利益の算定においては、通常、基礎収入を学歴計・全年齢平均賃金額として、満18歳になったときから、満67歳になるときまで就労するものとして、損害算定を行うこととなります。
 
しかしながら、被害者が高校生の場合で、ほぼ全ての生徒が大学に進学するような進学校に通っていたような場合、ご家族は、大卒前提での逸失利益を請求することを希望されることがあります。
 
平成29年の賃金センサスは以下のとおりです。

男性学歴計平均 551万7400円
男性大卒計平均 660万6600円
 
年収にして、金100万円以上の差があるので、大卒を主張した方が、一見、金額的に大きくなるように思えます。
 
しかしながら、大卒を主張すると、就労開始までの期間が空いてしまうこと、逸失利益の算定に5%ライプニッツ係数を使用することから、実は却って、金額的に小さくなるということがありえます。
 
例えば、16歳の男子高校生が亡くなったケースで算定してみます。
以下のとおり、大卒を主張した方が、約164万円ほど、逸失利益が少なくなるということになります。
 
【高卒を主張した場合】
  年収551万7400円×(1-0.5)×(18.339-1.8594)=4546万2273円
  学歴計賃金センサス   生活費割合 ライプニッツ係数
 
【大卒を主張した場合】
  年収660万6600円×(1-0.5)×(18.339-5.0757)=4381万2659円
  大卒計賃金センサス   生活費割合 ライプニッツ係数
 
このような場合は、金銭的にどちらにメリットがあるのか、ご家族に十分に説明した上で、被害者の将来性についてのご家族の思いと調整する必要が出てきます。
 

慰謝料

慰謝料とは、生命・身体等が侵害された場合の精神的損害に対する損害賠償金を意味します。
 
交通事故の死亡事故における慰謝料請求権者は以下のとおりです。
1 被害者本人
2 一定の近親者(ご両親、配偶者、お子様等)
 
被害者本人の慰謝料については相続人が請求することになります。
 
金額については類型化されており、裁判所では概ね以下の金額が基準とされています。

一家の支柱  2800万円
母親、配偶者  2500万円
その他  2000~2500万円
「一家の支柱」とは、当該被害者の世帯が、主として被害者の収入によって生計を維持しているような場合です。
通常は、父親が亡くなられた場合は、一家の支柱として扱われます。
 
「その他」は、独身の男女、子供、幼児等をいいます。
 

慰謝料の増額事由

慰謝料の基準は前述のとおりであり、多くの事案で裁判官は、基準どおりの認定をします。
しかし、事故態様が極めて悪質である場合、事故後の加害者の対応が著しく不誠実である場合などには、基準金額よりも慰謝料が増額されることがあります。
 
例えば、東京地裁平成15年7月24日判決では、当時の基準額の1.5倍を超える慰謝料が認定されています。
 
事案は、東名高速道路で渋滞のため減速して走行していた被害車両に、飲酒運転の大型トラックが衝突して、被害車両内の2名の女児(1歳と3歳)が亡くなられたというものです。
加害者は、事故後も、責任逃れ的態度や反省する真摯な行動がみられないと、判決で指摘されています。
 
また、大阪地裁平成25年3月25日判決では、基準額の1.4倍を超える慰謝料が認定されています。
 
事案は、30歳の男性が交差点を歩行中、無免許かつ飲酒運転の加害車両に衝突され、その後、約2.9キロメートルにわたって故意に引きずられて、亡くなられたというものです。
通常の交通事犯の範疇を超えて殺人罪に該当する極めて悪質かつ残酷なものであること、引きずられながら絶命した被害者の苦痛苦悶は筆舌に尽くしがたいこと、まだ30才にして養育すべき妻子を残して突然命を奪われた無念さは察するに余りあることなどが、判決で指摘されています。
 

近親者慰謝料

被害者が亡くなられた場合には、被害者のご両親、配偶者、お子様には、本人の慰謝料とは別に慰謝料を請求できることが民法上、定められています。
当然ですが、本人だけではなく、そのご家族が甚大な精神的ダメージを被るからです。
 
判例上、内縁の配偶者、祖父母、孫、兄弟姉妹についても被害者との間に特別に緊密な関係があったといえれば、慰謝料請求ができることが認められています。
 
ただし、近親者の数が多数であるとしても、そのことから当然に慰謝料の総額が増加することにはなっていません。基本的には、「慰謝料」に記載された慰謝料の基準額が、本人及び近親者の慰謝料を足した総額と考えられていることに注意が必要です。
 
慰謝料が増額されるような特別な事情の有無を精査して、主張すべき事情があれば的確に主張していく必要があります。
 

葬儀費用等

葬儀やその後の法要(四十九日、百日の法要)、仏壇・仏具購入費、墓碑建立費用等については、一定の金額の範囲内において、損害として認められています。
通常は、150万円とされており、現実の支出が150万円を超えるような場合でも、直ちにその金額全てが損害として認められるということにはなっていません。
150万円を下回るような場合には、その現実の支出額の限度で損害が認められます。
 
ただし、150万円を超える金額を認めた裁判例も存在しますので、実際の支出額が多額に及ぶ場合には、具体的な事情を主張、立証していく必要があります。
 

入院慰謝料

交通事故で被害者の方が亡くなられる場合、事故後、病院に救急搬送されて、しばらく入院されることも少なくありません。
 
入院中、意識が戻られないことも多い印象ですが、その間も被害者の方が強い苦痛に苛まれていることは否定できません。
また、当然ですが行動の自由も一切奪われてしまっています。
 
したがいまして入院期間に応じた慰謝料が当然に支払われるべきです。
 

入院雑費

被害者の方が亡くなられるまでの間、入院されていれば、タオル代等、様々な雑費が必要となることが通常です。
裁判基準では、日額1500円が損害として認められることになります。
決して大きな金額ではございませんが、こうした損害も積み上げていく必要がございます。
 

休業損害

被害者の方が亡くなられるまでの間、入院されていれば、当然ですが、その間、就労できなかったことになります。
こちらについては、休業損害を計上する必要がございます。
 

ご家族の通院交通費

被害者が単身赴任等により家族と離れて暮らしていて、単身赴任先で事故に巻き込まれてしまったような場合、当然ですが、ご家族は交通費を支出することになります。
場合によっては、飛行機を使用せざるを得ないこともあり、往復で計上すれば相当額に及ぶこともございます。
これらの交通費については当然、損害として請求していくこととなります。
 

訴訟を提起するよりも、自賠責保険会社に請求をした方が良い場合

自賠責保険の支払基準は、強制保険として最低限度の賠償金を定めています。
そのため、通常は、訴訟を提起した場合に認められる金額よりも低額になることがほとんどです。
 
しかしながら、被害者に相当程度の過失が認められる場合には、注意が必要です。
特に逸失利益が認められないような無職の高齢者の場合、注意が必要です。
 
死亡事故の場合、自賠責保険では、被害者の過失が7割未満の場合、被害者保護の観点から、過失相殺による減額が行われません。
 
そのため、逸失利益が認められない無職の高齢者の場合、訴訟提起した場合よりも、自賠責保険金の方が高いということが出てきます。
 
したがいまして、無職の高齢者で、過失が相当程度認められる場合には、直ちに訴訟提起をするのではなく、自賠責保険会社に被害者請求した場合と訴訟での見通しとを、精査して比較検討した上で、解決の方法を考える必要が出てきます。
 

弁護士に依頼することで、どのくらい賠償金の額が違うのか

交通事故における賠償金の算定基準は、以下のとおり3つあります。
 
1 自賠責基準
2 任意保険会社基準
3 裁判基準
 
裁判基準とは、裁判官が採用する基準で、通常、自賠責基準や任意保険会社基準は裁判基準の3割から6割程度であることが多いです。
 
しかしながら、被害者の方が直接交渉しているケースでは、通常、保険会社は、自賠責基準や任意保険会社基準に近い金額しか提案してきません。
 
弁護士は、何かあれば訴訟を提起するという前提で交渉しますので、任意交渉であっても裁判基準に近い金額で妥結できることが多いです。
 
また、相手方が十分な提案をしてこなければ、実際に交通事故紛争処理センターに申立をしたり、訴訟提起をすることで、裁判基準を確保することができます。
 
交通事故における死亡事故の賠償金は、通常、数千万円であることが多く、1億円を超えることもあります。
そのため、弁護士に依頼するか否かで、何百万円かは差が付くことが多く、何千万もの増額になることも少なくありません。
 
弁護士費用特約が使用できるケースはもちろん、使用できないケースであっても、ほぼ確実に弁護士に依頼された方が宜しいということになります。

当事務所でなくても構いませんので、示談前には必ず弁護士にご相談されるようにして下さい。
 

『交通死-命はあがなえるのか-(岩波新書、二木雄策著)』

この書籍は、当時19歳の娘様を交通事故で突然に亡くされた経済学者の二木雄策先生(神戸大学名誉教授)が、自ら刑事裁判、民事調停、民事裁判(民事訴訟は弁護士に依頼しない本人訴訟)を経験された過程を詳細に記載されています。
また、その中で、被害者を置き去りにして行われる刑事裁判の問題点、論理性を欠いた被害者の損害の算定方法等について、極めて鋭い分析を行われています。
 
交通事故を専門に扱っている弁護士でも、唸らされる内容ばかりです。
 
文章全般に強い熱量が感じられます。現実に、家族を亡くされたご遺族が書かれた書籍であることが随所に感じられます。
 
二木先生の娘様が交通事故に遭われたのは1993年とのことですので、25年ほどが経過しています。
当時に比べれば、刑事裁判には被害者ないしそのご遺族が一定限度で関与できるようになっています。
我々も被害者参加制度により、ご遺族の方と一緒に死亡事故や重度後遺障害事案の刑事裁判に参加してきていますが、その点では、当時に比べて改善されている部分があります。
 
そのことにより、裁判官も被害者やご遺族の生の声を聞く機会が増えているはずであり、裁判官の心境にも変化が生じていることが予想されます。
 
しかしながら、交通犯罪の量刑の軽さ、書籍で指摘されている保険会社側の弁護士の対応、民事訴訟での被害者の損害の算定方法等については、未だに多くの問題が残っています。
 
二木先生の娘様は、青信号に従って、横断歩道上を自転車で進行していたところ、赤信号を無視した加害車両に衝突されて亡くなられています。
量刑は、懲役2年執行猶予3年とのことです。
 
一般人的な感覚としては、軽いといわざるを得ないというのが正直な印象です。
ただ、当時の量刑相場に照らせば、穏当というところなのかもしれません。
検察官が控訴していないことからも、そう判断せざるを得ません。
 
経済学が専門の先生が書かれていますので、若干、分かり難い部分も有るかと思われますが、刑事裁判、相手方保険会社担当者との交渉、保険会社側代理人弁護士との交渉、民事調停、民事裁判と実際に体験された事実が記載されていますので、色々な面で参考になる書籍かと思います。
 
ご遺族の方で、刑事裁判、民事損害賠償がどのように進んでいくのか、お知りになりたい場合はご一読されることをお勧め致します(ただし、現在とは違っている部分があることは差し引いて読まれる必要がございます。具体的な違いについては、弁護士に確認されることをお勧め致します。)。